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 大注目のビッグゲームが意外な大差となった週末のプレミアリーグ。他にも色々な記録や珍事が生まれたので、週末のプレミアリーグを数字と共に振り返ろう。

[写真]=Getty Images

◆■リヴァプール7-0マンチェスター・U

 まずは何といっても「リヴァプールマンチェスター・U」の大一番だろう。イングランドを代表する名門同士の対戦は驚きの結果となった。5日(日)に行われたプレミアリーグ第26節の注目の一戦は、ホームチームが圧巻のゴールショーを披露した。

 リヴァプールは前半43分に、カウンターからオランダ代表FWコーディ・ガクポのゴールで先制すると、後半に入ってゴールを量産。ガクポが2点目を奪ったほか、ウルグアイ代表FWダルウィン・ヌニェスとエジプト代表FWモハメド・サラーもそれぞれ2ゴールを叩き込み、最後は途中出場のブラジル代表FWロベルト・フィルミーノがとどめの一発を決めて7ゴール。なんと「7-0」という大差で宿敵を粉砕したのだ。

 データ会社『Opta』によると、3選手(ガクポ、ヌニェス、サラー)が2ゴールずつ決めるのはプレミアリーグ史上4度目の快挙。前回、その偉業を成し遂げたのは1999年2月のマンチェスター・Uアンディコール、ドワイトヨーク、オーレ・グンナー・スールシャール)だったという!

 この2得点でサラーも新たな記録を生み出した。2017年リヴァプールに加入して以降、プレミアリーグ205試合に出場して129ゴール目。これで元イングランド代表FWロビー・ファウラー128ゴール(266試合)を抜いて、リヴァプールプレミアリーグ歴代最多ゴール記録を更新した!

 とはいえ、正直なところゴールシーンさえ見なければ「7-0」の大差がつく試合には見えなかった。それどころか、どちらが勝ったかさえも分からないほど、ゴールシーン以外は拮抗していた。スポーツ専門サイト『The Athletic』によると、ゴール期待値はリヴァプールが「2.78」、マンチェスター・Uが「0.82」だったという。本来ならば「3-1」くらいのスコアになるはずが、ゴール前のこぼれ球が面白いようにリヴァプールのアタッカー陣の足元に転がってきたため「7点」という大差がついた。

 当然、「7-0」というスコアも歴史に刻まれることになった。リヴァプールにとってマンチェスター・U戦での最大の勝利となったのだ。211度目となった両者の対戦において、片方のチームが7点も奪うのは1908年の「7-4」、1895年の「7-1」に続いて史上3度目。全てリヴァプールホームゲームで達成している。そして今回の「7-0」はリーグ戦での初対戦となった128年前の「7-1」の6点差を抜いて、このカードにおける最多得点差記録となったのだ!

 マンチェスター・Uにとっては、これ以上ないほどの屈辱だ。「0-7」の大敗は、クラブ記録に並ぶ最大の敗戦なのだ。1931年12月のウォルヴァーハンプトン戦、1930年12月アストン・ヴィラ戦、そして1926年4月のブラックバーン戦に次いで4度目の「0-7」となった。過去3回はいずれも90年以上も前のため、今のマンチェスター・Uサポーターにとっては初めて経験する記録的な大敗と言えるだろう。

 それはサポーターだけでなく監督にも言えること。今季からマンチェスター・Uを率いるエリック・テン・ハフ監督にとっても、監督キャリア「481試合目」にして最大の敗戦となった。これまでユトレヒトやアヤックスを率いてきた同指揮官は、ユトレヒト時代の2017年9月にエールディヴィジPSVホームに迎え、後にブライトンでもプレーするFWユルゲン・ロカディアに4ゴールを許すなどして「1-7」という大敗を喫していたが、今回の7点差の敗戦はそれを超える自己ワースト記録となった。

 ちなみに、テン・ハフ監督の“過去最大の勝利”は7点差なんてものじゃない。アヤックス時代の2020年10月に敵地でVVVフェンローを「13-0」のスコアで圧倒。これはエールディヴィジのみならず、オランダプロサッカーの歴史において史上最多得点差の勝利だった。しかし、今月3日(金)にオランダ2部のズヴォレが「13-0」でデン・ボスに勝利してアヤックスの記録に並んで見せたのである。もしかするとテン・ハフ監督は、リヴァプール戦の試合前から嫌な予感を覚えていたかもしれない…。

 いずれにせよ、マンチェスター・U1月22日アーセナル戦(2-3負)以来となる公式戦12試合ぶりの敗戦を喫することに。まだ1試合消化が少ないとはいえ、首位アーセナルとは「14ポイント差」となり、10年ぶりのリーグ優勝は非常に厳しくなった。ということは、イングランド勢として史上初の主要大会「4冠」の可能性も消滅したと言っても過言ではないだろう。

 一方で、勝利したリヴァプールは4位トッテナムに3ポイント差まで肉薄。ニューカッスル、フルアム、ブライトンを含め、シーズン終盤まで激しい“トップ4争い”を演じることになるだろう。

◆■アーセナル3-2ボーンマス

 そんな大差がついた大一番よりもドラマ性が濃かったのが、首位アーセナルが19位ボーンマスを本拠地エミレーツ・スタジアムに迎えた一戦だ。4日(土)に行われた試合は、誰もがアーセナルの快勝を予想するなか、ボーンマスが大健闘する。

 開始早々、いや、正確には「開始9.11秒」にゲーム動いた。キックオフからサインプレーを仕掛けるボーンマスは“初手”でゴールを奪ったのだ。左サイドに人数を集めながらキックオフで逆の右サイドへ展開すると、そこから持ち込んで最後はクロスデンマーク代表MFフィリップ・ビリングが飛び込んで「開始9.11秒」に先制。2019年シェーン・ロングの「7.69秒」に次ぎ、プレミアリーグ史上2番目に早いゴールが誕生した!

 恐らく、この日のアーセナル経験値を欠いていたのだろう。というのも、生え抜きのFWエディ・エンケティア(23歳)や2016年から所属するスイス代表MFグラニト・ジャカ(30歳)が先発から外れたことで、スタメン11名は2018年以降に加わった(もしくは内部昇格した)選手だけとなった。アーセナルの試合で、スタメン11名とも“アーセン・ヴェンゲル政権時代(1996-2018)”に出場経験のないプレーヤーが揃うのは1986年1月以来、37年ぶりの珍事だという!

 それでも、絶対に取りこぼせない首位アーセナル一方的に攻め続けた。対するボーンマスも、完全に引いて守りながら、たまに発動するカウンターで追加点のチャンスをうかがった。そして後半、この試合で得た唯一のコーナーキックから2点目を奪って見せたのだ。

 その後は0-2とされたアーセナルがさらに攻勢を強めた。そしてトーマス・パルティの得点で1点差に迫ると、70分にはDFベン・ホワイトアーセナルでの記念すべき初ゴールマークブライトン時代を含めてプレミアリーグでは94試合目にして初得点となった。

 これで追いついたアーセナルがその後も猛攻を仕掛け、後半の追加タイムにこの日17本目となったコーナーキックから途中出場のFWリースネルソンが左足を振り抜いて劇的な決勝ゴールを奪った。「開始9.11秒」に先制ゴールが生まれた試合は、最終的に「96分57秒」の逆転弾で首位アーセナルが勝利を収めたのである。

 アーセナルプレミアリーグの試合で2点ビハインドから逆転勝利を収めるのは2012年2月のトッテナム戦(5-2勝)以来、実に「4024日ぶり」のことだという。さらにアーセナルは、これが今季プレミアリーグで最多となる3度目の90分以降の決勝ゴール! 一方で、敗れたボーンマスは今季3度目となる2点リードからの逆転負けだったそうだ…。

 19年ぶりのリーグ制覇を目指すアーセナルは、まるで優勝したかのように全員で抱き合いながら試合後に勝利を祝った。最後まで諦めずに攻め続けた彼らのファイティングスピリットには脱帽だ。この日のシュート数「31本」は、アーセナルにとって今季リーグ戦で最多。彼らが30本以上を記録するのはプレミアリーグではわずか5度目のことだという。

 31本のうち「11本」はMFマルティン・ウーデゴーアのシュートだったが、プレミアリーグの歴史において1試合のうちに彼よりもシュートを放った選手は4名しかいないという(ウェイン・ルーニークリスティアーノ・ロナウドズラタン・イブラヒモヴィッチロビン・ファン・ペルシ)。

 こうして様々な記録が生まれた「リヴァプールの大勝」と「アーセナルの逆転劇」。今季プレミアリーグトップ4争いとタイトルレースにおいて、これほどドラマチックな週末は他に考えられないだろう!?

(記事/Footmedia

プレミアリーグ第26節を振り返る [写真]=Getty Images


(出典 news.nicovideo.jp)