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歴史を塗り替える14ゴールを決め、モンゴル代表を一蹴した日本代表モンゴルのラスティスラフ・ボジク監督は試合後「こういう結果の試合を分析するのは難しいですし、分析をしても意味はないと思います」とコメント。完敗を認めた。

日本代表にとっては1年4カ月ぶりの公式戦となったモンゴル戦。新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で延期されていた試合は、さらにアウェイゲームながら日本での開催と、いかに世の中の状況が混乱しているかを示しているような試合となった。

モンゴル代表もトルコでの2カ月の合宿を経てボジク監督の下で活動を再開。昨年9月に国内リーグが終わっているということもあり、選手のコンディションは良くなかったと言える。そして、チームとしての成熟度もかなり低いことは見て取れた。

◆力の差は歴然も…


予選の成績、そして日本のホームゲームで6-0で勝利していることから見て、力の差があることは歴然としていた。しかし、吉田麻也は「ビッグマッチだったり、大勝した後は気持ちが緩みがちになる」と試合前に警戒。森保一監督も「韓国戦はたくさんある中の1試合だと思っていても特別なモチベーションに自然となる試合なので、そのあとのモンゴル戦は非常に難しい」と語り、力の差はあれど簡単なゲームにはならないと語っていた。

それもあってか、韓国戦からのスタメン変更は2名のみ。山根視来、佐々木翔の両サイドバックに代わり、松原健、小川諒也を起用。その他のメンバーは、今回のベストと言える顔ぶれとなった。

そんな中でキックオフを迎えた試合。立ち上がりはモンゴルも積極的に入り、狙い所を決めて自分たちのスタイルを出そうとプレーしていた。「試合前の目標は1点でも入れようということでした」とボジク監督が試合後に語ったように、ここまで予選で無失点の日本、そして6-0で敗れた日本に対して、一矢報いることが目標だったようだ。

立ち上がりからペースは日本が握っていたが、相手陣内に攻め込むも、体を張ったプレーやアタッキングサードでの精度を欠き、なかなかゴールを奪うことができなかった。立ち上がりから圧倒していたかと言えばそうではない試合。相手が強豪国であれば、その間に仕留められていた可能性も考えられる。

それでも、13分に中央にポジションを取った南野拓実が横パスをコントロールし、コースを狙って左足でシュートを放ち先制。すると勢いに乗った日本は23分に吉田麻也の縦パスを南野がスルーすると、大迫勇也ターンで相手をかわしてそのまま流し込み追加点。3分後の26分には伊東純也クロス鎌田大地ダイレクトで蹴り込み、一気に3ゴールを奪う。

これでペースを完全に掴んだ日本は33分に守田英正が伊東のグラウンダーのクロスダイレクトで蹴り込み代表初ゴール。39分には右サイドを猛然と上がった松原のクロスオウンゴールを誘発し、前半だけで5点のリードを奪うこととなった。

試合の大勢は決していたが、「我々の選手は決して諦めることはしませんでした」とボジク監督が語る通り、モンゴルの選手たちは決して諦めることなくチャレンジ。フェアにしっかりと日本と戦おうという気概を見せ、戦い続けるメンタリティを見せた。その点では、日本も良い相手と戦えたと言って良いと言えるだろう。

◆今までになかった展開に

前半で5点リードした日本は、後半が始まるにあたってゴールを決めた守田に代えて浅野拓磨を投入。システムも[4-1-4-1]に変更し、新しい形を試すことにした。

さらに、5点のリードを得ていた日本だったが大迫勇也は「後半45分あるので勿体無いので、やるからにはしっかり点を獲ろうと話した」と試合後に語ったが、その言葉通り、後半も日本の選手たちは躍動する。

55分には鎌田がボディフェイントだけで3選手を振り切りグラウンダーのクロスを送ると、これを大迫が決めて6-0に。すると、森保監督はここで吉田と鎌田をさげて、名古屋グランパスプレーするDF中谷進之介とMF稲垣祥を同時に投入。初招集メンバーのうちGK前川黛也以外の7名をデビューさせる決断を下す。

再びシステムを[4-2-3-1]に戻すと、68分には大迫の落としをその稲垣が得意のミドルシュートで蹴り込み代表初ゴール。さらに伊東にもゴールが生まれると、途中出場の古橋亨梧も代表初ゴールを記録。浅野にもゴールが生まれるなどし、終盤に畳み掛けて終わってみればW杯予選歴代最多記録となる14ゴールを奪って勝利した。

点差が開いてからはモンゴルの選手たちが体力的にも精神的にも落ちたとはいえ、「14」ものゴールを奪い切ることは、今までの日本代表では考えられなかった。相手との実力差があったとしても、「14」ものゴールを決めるのは簡単ではない。さらに、モンゴルも試合を捨てていたことはなく、しっかりとサッカーを続けていた上での「14」ゴールだ。

ではなぜこの「14」ゴールが生まれたのか。様々な要因は考えられるが、やはり一番のポイントは“意識”と言えるだろう。

◆1段階上がった意識レベル

事の発端はやはり韓国代表とのゲームと言える。試合前に吉田が「日本代表で戦う以上、最も大切な試合」と口にした韓国戦。若手との試合の捉え方のギャップを感じていることも口にしていた吉田だが、キャプテンの発破により今までにないインテンティの高さを見せた日本は、これまで2連敗を喫していた韓国に3-0で快勝を収めた。

もちろん、FWソン・フンミン、FWファン・ウィジョ、FWファン・ヒチャンヨーロッパで戦う主力がいなかったこともあるが、それでも国内の代表選手を揃えた韓国を圧倒し続けた。まさに、吉田の想いがチーム全体に伝播した結果だと感じさせられた。

そこからのゲームでもあり冒頭の懸念材料があったが、そんなものは今の日本代表には杞憂だった。常連組の高い意識に引っ張り上げられるように、初招集組や経験が少ない選手たち意識レベルが上がり、差を感じながらもしっかりとついていった。

そしてその雰囲気はしっかりとモンゴル戦でも継続され、最終的には「14」のゴールが生まれた。前半を5点リードしている日本が、後半で9点を獲る姿は当然見たことがない。途中出場の選手が5ゴールを決めることも、残り5分から4ゴールを奪うことだって、見たことがない。

それを「モンゴルの実力」で片付けるのは簡単だが、それでも「14」のゴールが生まれるとは思えない。なぜなら、過去に一度もそんな展開は見せたことがないからだ。

そういった点では「点差があっても自分のプレーを最後までやろうと思っていた」(伊東)、「今までは時間を使うプレーも多かったですが、今日は後ろの選手にもできるだけ前につけてくれと言った」(大迫)、「最後まで戦い抜けるかというところにフォーカスしていた」(遠藤航)と試合後に口を揃えて語ったように、意識の部分で90分間をしっかりと戦い抜くという意識が選手たちにあったからだと言える。

これは韓国戦で得た手応え、モチベーションをしっかりと継続できたこと。チームとして1つの方向を向いており、同じテンションで臨めたことが大きい。意識の高いチームを作ることができた結果だと言えるだろう。

◆どこまで持続させられるか

この結果、日本は最終予選進出に王手をかけた状態に。次は6月の活動となり、2カ月空くことになる。6月も日本での開催となるため、コロナの影響も含めてどのようなメンバーを招集できるかは現時点では不透明だ。

今回招集されていない日本代表の選手も多数いる状況。さらに、ラージリストに入っている選手も多くいるはずだ。今回は8名が初招集となったが、6月も同様に初招集を受ける選手が多くなるかもしれない。

不透明な状況が続くことは間違いないが、その間にやるべき事はこの意識を継続して、日々の各クラブでのトレーニングや試合で発揮できるのか。さらによりその意識を磨き上げるかが、日本の今後に懸かってくると言って良いだろう。

吉田も「意識高く高いパフォーマンスを意識して次の招集に備えることが大事だと思います」とコメントしている通り、この意識が6月の招集時にリセットされないことを願うばかりだ。

これまで誰もが見たことがない畳み掛ける展開での14-0という結果は、相手の弱さではなく、自分たちの力を出し切ろうとした結果だと前向きに捉えるべき。ケチがつかない勝利を挙げた時こそ、もちろん反省をしながらも、素直にポジティブな部分を伸ばすメンタリティを持っても良いと思う。

《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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(出典 news.nicovideo.jp)