本誌ご意見番・セルジオ越後氏も 「いま日本代表で最も見たい選手」と絶賛する、ぶっちぎり王者・川崎のアタッカー・三笘薫をリモート直撃!
本誌ご意見番・セルジオ越後氏も 「いま日本代表で最も見たい選手」と絶賛する、ぶっちぎり王者・川崎のアタッカー・三笘薫をリモート直撃!

辛口で知られる本誌『週刊プレイボーイ』のご意見番・セルジオ越後氏をはじめ、多くの解説者、評論家が「いま日本代表で最も見たい選手」と大注目。大卒1年目の昨季、首位を独走し続けた川崎フロンターレにあって強烈なインパクトを残した三笘薫(みとま・かおる)選手は、実に地に足が着いていました!(インタビュー1月30日リモート取材で行ないました)

■「どちらかといえばネガティブな性格」

――昨季はチームリーグ天皇杯の2冠に輝くなか、リーグで13得点12アシスト天皇杯決勝でもゴールを決めるなど大活躍でした。

三笘 出来すぎですよね。リーグゴールアシスト共に2桁取れるなんて、なかなかないでしょうし。ただ、あくまでチームが好調ななか、周りの選手に助けられての数字です。

途中出場も多かったですし(リーグ戦出場30試合のうち先発は11試合)、内容的には満足していません。予想以上の結果ではありましたけど、自分の中ではボールロストなどミスした場面のほうが印象に残っています。

――セルジオ越後さんをはじめ、多くの解説者、評論家が五輪代表はもちろん、「早くA代表に招集すべき」と言っています。

三笘 素直にうれしいです。ただ、僕自身、A代表に入れるレベルなのかどうか自問自答している部分もあって......。もし呼ばれて活躍できなければ、フロンターレだから活躍できたと言われてしまいますよね。

そう考えると、もちろん選ばれたい気持ちはありますけど、いまはどんな環境でも自分の力を発揮できるように意識してやるだけかなって。

――昨季はMVP級の活躍だったというのに、自己評価が低すぎませんか?

三笘 どちらかといえばネガティブな性格なので(苦笑)。去年のシーズンが始まる前も正直、不安のほうが大きかったですし、シーズン中も試合前はいつも不安で。でも、不安があったからこそ、しっかり考えて準備もしましたし、それが逆によかったかもしれないですね。

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川崎の下部組織で育った三笘は、高校卒業時にトップチーム昇格の打診を受けながら、それを断って筑波大学に進学。当時の決断については「まだプロでやれる自信がなかった」と公言しているが、昨季の活躍を目の当たりにすると、にわかには信じがたい。

ちなみに、川崎U-18在籍時、三笘の1学年上にはすでに日本代表入りを果たしている三好康児(現・アントワープ)と板倉滉(こう/現・フローニンゲン)がいた。

――当時はプロ入りの自信がなかったって本当ですか?

三笘 本当ですよ。例えば、僕の場合はポジション的に三好君と重なる部分があって、自分と比較してすべてで上回っていた三好君が、トップに昇格した1年目はほとんど試合に出られていない状況でしたから(リーグ戦3試合、計32分間の出場)。

それにフロンターレには大卒で成功している選手も多くいたので、自分の人生を考えたときに(プロ入りは)4年後でもいいかなって。絶対にプロになりたいという気持ちはありましたけど、将来を考えればサッカーだけをやっているよりも違った環境を知っておいたほうがいいじゃないですか。

――実に慎重ですね。焦ってプロに行くのではなく、プロになれなかったときのことも想定しての選択だったと。

三笘 そういうことも考えていましたね。

■「速そうに見えない」ドリブルの秘密

三笘の最大の武器は、細かいタッチと緩急を使い分ける独特のドリブル。圧巻だったのは、昨季のリーグ優勝に王手をかけた30節の横浜Fマ戦。終了間際、自陣でドリブルをスタートさせるとスピードに乗って相手DFふたりをかわし、約75mを独走。最後はFW小林悠に丁寧なラストパスを送り、試合を決定づけるゴールを演出した。

――ドリブルをするときには、どんなことを意識しているのですか?

三笘 状況にもよりますけど、まずはゴールを目指してスペースがあればどんどん前に運んで、近くに味方がいてパスのほうがよければパスを出すという感じです。相手と距離があるときは、ドリブルのタッチを大きくして自分のスピードを上げて、相手との距離が短くなれば細かいタッチに切り替えて、いつでもプレーを変えられるようなタッチは心がけています。

――ストライド(歩幅)が大きく、一見スピードがあるようには見えないのですが、スルスルと相手の間を抜けていくというか......。

三笘 チーム内では足は速いほうなんですけど、全然速そうに見えないですよね(苦笑)。ピッチ(足の回転数)は多くないですし、それは僕も感じています。でも、速く見えないのがメリットというか、相手も読みづらいかなと。

――昨季の活躍で一気に注目度が上がりましたが、周囲の変化はどう感じていますか?

三笘 いまもこうして取材を受けていますし、メディアに出る機会は増えました。ただ、自分の中では注目度に実力が追いついていないと思っているので、そこを早く追いつかせたいです。プレッシャーではないですけど、まずは昨日より今日、今日より明日うまくなりたいと思って、いまは自分と闘っている感じですかね。

――広く顔を知られたことで困ったことは?

三笘 街中で気づかれることは増えました。でも、幸いコロナ禍で外出の機会は減っているので。しばらく会っていなかった友達から突然連絡が来たりもしますけど、応援してもらえるのはやっぱりうれしいですよ。

――三笘の「とま」の字を「苫」と間違えられることも減ったそうですが、それとは逆に、メディアで取り上げられる機会が増えたことで、自分のことが誤って世間に伝わっていると感じることは?

三笘 特にないです。ただ、1年目で結果が出たとはいえ、少し過大評価されている気がします(苦笑)。

■「アジアで勝ちたい。そこにはこだわる」

――川崎は昨季限りで中村憲剛選手が引退しました。三笘選手は新たなチームの顔としても期待されます。

三笘 憲剛さんがいなくなって寂しい部分はありますけど、いつまでも頼ってはいられないので、僕らがチームを下から突き上げる形で引っ張っていけたらと思います。

――三笘選手にとって、中村憲剛さんはどんな存在だったかも気になります。

三笘 憧れの存在でした。とはいえ、一緒にプレーする以上はそういう気持ちは捨てなければと思いながらも、やっぱり遠慮してしまう部分もありました。

最初は話すときもガチガチに緊張していましたし、少しずつ慣れてはいきましたけど、気軽に話せる相手ではなかったです(苦笑)。1年間一緒にプレーさせてもらい、ピッチ内外で本当に多くのことを肌で学ばせてもらいました。

――最後に、2年目となる今季のチームと個人の目標をお願いします。

三笘 チームとしては、リーグ連覇はもちろん、獲れるタイトルはすべて狙いたいです。特にフロンターレはまだアジアチャンピオンズリーグ)で優勝したことがないので、そこにはこだわりたい。個人としては、相手も対策をしてくると思いますけど、それを上回るような誰が見てもスゴかったというような活躍ができれば。

――昨季の活躍がスゴかった分、2年目に向けてのハードルもかなり上がりましたね。

三笘 だいぶ上がっちゃいましたね。周りの見る目も厳しくなりますし、チームとしても、個人としても昨季以上の成績を残すのはめちゃくちゃ難しいと思います(苦笑)。ただ、1年目を超えるような活躍をしないといけないというプレッシャーをかけながら、それを超えられる選手になりたいですね。

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「将来、海外でプレーしたい気持ちはある」と話し、だからというわけではないが、コロナ禍の自粛期間中には英語の勉強もしていたという。今季の活躍次第では海外移籍も時間の問題かもしれない。

●三笘薫(みとま・かおる
1997年生まれ、神奈川県出身。川崎の下部組織で育ち、筑波大学に進学。川崎入団1年目の昨季は新人最多得点(タイ)、リーグ最多アシストを記録するなどしてチームの独走優勝に貢献。178㎝、71㎏

取材・文/栗原正夫 撮影/藤田真郷

セルジオ越後氏も 「いま日本代表で最も見たい選手」と絶賛する、王者・川崎のアタッカー・三笘薫をリモート直撃


(出典 news.nicovideo.jp)