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ドイツ発コラム】開幕2試合で11失点、最下位に低迷 多額の負債抱え、アカデミーの運転手を大量解雇

 リーグ2試合で1得点11失点、リーグ最少得点と最多失点、順位は最下位。数年前までUEFAチャンピオンズリーグ(CL)に出ていたシャルケの誇りが、ガラガラと音を立てて崩れ落ちていく。

 内田篤人ジェフェルソン・ファルファンと右サイドを切り崩し、ゴール前ではクラース・ヤン・フンテラールとラウール・ゴンザレスが相手の懸命な守りをするするとかいくぐっては、ゴールを決めていく。ジョエル・マティプやベネディクト・ヘーベデスが統率する守備はいつでも固く、そして最後尾にはマヌエル・ノイアーが君臨。そして彼らはCLでも駆け抜けていった。

 そんな時代があった。本当にあったのか。ここ最近は上位から見放され、UEFAヨーロッパリーグ争いにも絡めないことが続いていた。昨シーズンは前半戦こそ上位に食い込んでいたが、後半戦は負け続け。降格しなかったことだけが収穫だった。

 それでも、俺たちはシャルケだ。シーズン前はそうファンも思っていた。リーグが始まってまだ2試合。だが、今やポジティブに思える要素が何一つない。リーグ戦での未勝利は18試合も続いている。

 開幕のバイエルン・ミュンヘン戦(0-8)は「ビルト」紙に、「もう二度とバイエルンとの開幕戦にこんなクラブを当てないでくれ。世界中の人が注目する開幕戦がこんな一方的な試合だなんて。ドイツサッカーリーグ機構(DFL)は開幕戦の相手はもう少し吟味したほうがいい」と書かれるほど、鮮烈に酷かった。

 どちらかというとテクニカルな選手を多くピッチに送ったデイビッド・ワグナー監督だが、それでもバイエルンのプレスをかいくぐれるだけのビルドアップ力はチームにないはず。それなのにパスをつなごうとし、中盤でそのプレスの餌食になっていく。

 それならせめてボールを取り返すべき中盤には守備に体を張れる選手をある程度揃えておくとか、カウンター対策に守備陣には1対1に強く、スピードのある選手がいるとかならまだ分かる。

 だが、この日のシャルケの陣容はむしろ真逆だ。スピードがなく、1対1に難を抱える守備陣、インテンシティーの高いプレーがあまりできない中盤……。出場選手とゲームプランが噛み合わない。悲しくなるほどあっさりとゴール前まで侵入を許し、失点を重ねていく。三冠王者のバイエルンが相手とはいえ、中盤からのロングパス一本で守備がずたずたになるというのは1部リーグのそれではない。

 第2節のブレーメン戦でも残念ながら1-3で完敗。そしてワグナー監督は解任へ。「ネガティブな流れを止めることができなかった。そのすべての責任を私は取る」との言葉を残してクラブを去ったが、シャルケはこの監督交代からどこまで状況を改善させることができるだろうか。成績面だけではない。多額の負債を抱え、新型コロナウイルスの波に襲われると育成アカデミーの運転手を大量解雇し、結果ファンから猛抗議を受けるという事態もあった。

地元紙はブラックジョーク 「結婚するならシャルケファンいいぞ

 新監督候補には元RBライプツィヒラルフラングニックなどいろいろな名前が挙がっていたが、最終的にはマヌエル・バウムに落ち着いた。アウクスブルク、その後U-18ドイツ代表監督を務めていたバウムは教師としての資格を持ち、戦術指導に長けた指導者と評価されている。

 確かにシャルケが求めていた部分ではある。ヨハンシュナイダーSD(スポーツディレクター)は、「人間としても監督としても、マヌエル・バウムはシャルケに非常に合うと確信している」と話し、バウムは「できるだけ速やかに、チームに成功体験をもたらすことが早急な課題だ。チームクオリティーは間違いないのだ」と言葉に力を込めていた。

 ただ「キッカー」誌によるファンアンケートによると、バウムはシャルケ監督に適任と答えたのはわずかに25%ほど。不安のほうが大きいのが確かなところだ。そんななか、注目の存在となっているのがアシスタントコーチに就任した元ブラジル代表DFナウドだ。長年シャルケのためにプレーし、そんなクラブへの忠誠心からもファンに愛された存在だろう。

 シュナイダーも「ナウドの選手として公式戦500試合以上という経験は、新しいコーチングチームにとって大きなプラスになる。シャルケのことを誰よりもよく知っているし、チームに多くのポジティブエネルギーをもたらしてくれるだろう」とシュナイダーも大きな期待を寄せている。

 シャルケファンは苦しい状況でも、クラブ愛を忘れたりはしない。嘆き節もたくさんある。どうポジティブに考えても、今クラブはものすごく苦しい。それでも、シャルケファンは献身的にクラブのために自分たちがやれることをやり続けるだろう。

 地元紙で、こんなブラックジョークを見つけた。

「結婚するならシャルケファンいいぞ。どれだけ何度もがっかりすることに遭遇したとしても、彼なら君をいつまでも見捨てないだろうから」

 シャルケファンクラブ愛は本物だ。そんなファンの思いに、今度こそクラブは応えることができるだろうか。落ちるところまで落ちたのなら、後は這い上がるしかないのだ。見栄なんていらない。恥も外聞もなく、どんな時でもクラブのために全力で汗をかき、必死に戦い続ける姿を、選手も、指導者も、クラブ関係者も見せていかなければならないのだ。

 シャルケは、そうやって戦ってきたクラブだったではないか。(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

ブンデスリーガの名門シャルケが


(出典 news.nicovideo.jp)