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【識者コラム】4-3-3に変更した川崎が攻守にパワーアップ

「1人がプレーするのは幅15メートルがいい」

 ヨハン・クライフはかつてそう言っていた。おそらく4-3-3ないし3-4-3のシステムを念頭においての発言だと思う。

 今季、J1では急に4-3-3が増えている。

 昨季は前半戦に横浜F・マリノスが採用していたぐらいで、これまでJリーグにはあまり普及してこなかったのに、今のところ川崎フロンターレ柏レイソルベガルタ仙台サガン鳥栖が4-3-3でプレーしている。

 川崎は4-3-3に変えてから、攻守にパワーアップした成功例だ。ボールポゼッションとハイプレスに向いたシステムの特長を最大限に生かしている。川崎の変貌ぶりを見ると、なぜこれまでやらなかったのだろうと思ってしまうが、Jリーグで4-3-3が流行らなかったのにはそれなりの理由がある。

 ヨーロッパの強豪クラブで主流になっている4-3-3が、なぜ日本で流行らなかったのかは、逆になぜヨーロッパで流行ったのかを考えると分かりやすい。4-3-3を伝統的に採用しているバルセロナのほかに、レアル・マドリードバイエルン・ミュンヘンユベントスパリ・サンジェルマンマンチェスター・シティリバプールといったところが挙げられるが、これらは他とは戦力も予算も隔絶したビッグクラブである。つまり、大半の試合は“勝って当たり前”という状況でプレーしている。

 対戦相手は予め引いてしまうことも多く、ボールポゼッションは確実に上回る。敵陣に押し込むので、高い位置からプレスを行う。4-3-3はそうした試合に合っているので、採用されていると考えられる。

 一方、J1は毎年最終節で優勝が決まるような力が均衡したリーグだ。圧倒的に強い1、2のクラブが牛耳るような状態ではない。だから、やや守備型の4-4-2や3-4-2-1が主流になっていたのではないか。

 ただ、日本はインサイドハーフの人材が豊富で、ウイングプレーヤーも多い。センターフォワード(CF)とアンカーは逆に層が薄いが、そこさえメドがつけばやってみる価値のあるシステムだったと思う。実際、4-3-3に変えてからの川崎はJ1で頭一つ抜け出たパフォーマンスを披露している。システムが選手のポテンシャルを引き出すこともあるわけだ。

 攻撃ではトライアングルを形成しやすく、守備では5レーンを埋めて前方からプレスするのに適している。クライフが「幅15メートル」と言っているのは、現在の用語で言えば5レーンを意識してのことだろう。ただ、もう一つ重要な含みがある。

勝つためだけでなく「プレーする喜びを犠牲にしないスタイル

 ポジションを固定気味にして選手をあまり動かさず、その代わりボールを動かしていく。選手が動きすぎてポジションがグチャグチャになってしまうとパスは回らないし、ハイプレスもやりにくい。だから各自幅15メートルベストなのだが、これで上手くパスが回れば、より多くの選手がプレーに参加できる。

 これが隠された目的……というか、クライフははっきりそう言っているのだ。

「子供でもプロでも、ボールに触ってプレーしたいものだ。より多くの選手がプレーに関与できたほうがいい」

 ほぼ全員で守って、1人か2人がカウンターアタックを仕掛けるサッカーでも勝てるかもしれない。だが、それでは満足にボールに触ってプレーできるのは1人か2人だけになってしまう。そうではなく、11人がより多くプレーする。そのための4-3-3や3-4-3であり、幅15メートルなのだ。

 勝つためだけでなく、より多くの選手がプレーに関与しながら勝利を目指す。プレーする喜びを犠牲にしないスタイル――。かつてのオランダが「トータルフットボール」と呼ばれたのは、そういう意味もあったのかもしれない。(西部謙司 / Kenji Nishibe)

川崎は4-3-3の導入でパワーアップに成功した【写真:高橋学】


(出典 news.nicovideo.jp)