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宇佐美貴史×柿谷曜一朗“天才対談”|第6回】19歳宇佐美バイエルン移籍を振り返る

 新型コロナウイルスの影響でJリーグが中断するなか、ガンバ大阪FW宇佐美貴史セレッソ大阪FW柿谷曜一朗が、オンラインFootball ZONE webの独占インタビューに応じた。アカデミー出身で、幼少期から“天才”と呼ばれ続けてきた2人。G大阪C大阪という強烈なライバル関係を持つ両クラブエースは、互いのプレーをどのような目で見てきたのか。そして天才に訪れた「転機」とは――。19歳で海を渡った宇佐美が、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝の“裏話”などを明かした。

 現在、両クラブエースに君臨する28歳の宇佐美と30歳の柿谷。だが、ここまでの道のりは決して“順風満帆”と言えるものではなかった。何度も壁にぶち当たり、時には挫折も経験した。2014年ブラジルワールドカップ(W杯)メンバーに選出され、スイスの強豪バーゼルへ渡った柿谷は、1シーズン半で古巣へ復帰。一方の宇佐美は、19歳でドイツバイエルン・ミュンヘンへと移籍を果たし、翌年にはホッフェンハイムに挑戦の場を移した。だが、なかなか結果を残せないまま13年夏に当時J2だったG大阪へと復帰した。

 16年に2度目の海外挑戦を決めた宇佐美は、再びドイツの地を踏み、アウクスブルクとデュッセルドルフプレー。そして、昨季途中に低迷していた古巣の救世主となるべくG大阪に戻ってきた。どん底に落ちても何度も這い上がってきた宇佐美サッカー人生。そのなかでも、柿谷が印象深いのはやはり衝撃の移籍となったバイエルン時代だったようだ。

柿谷「貴史の印象的な試合は、バイエルンに行ってすぐバルサとした試合。俺自身、相手に衝撃を与えるプレーを今も心掛けているのはあるけど、貴史がやってきた実績と比べたらレベルの差はあると思う。19歳の時やんな? それでバルサと試合をしたなかで、まず普通に馴染んでやっていることが凄いのに、それでも物怖じせんといつも通りのプレーをしていた。それで、試合が終わった後にチアゴが寄って来て。普通、反対やん? バルサと試合できて、貴史が『握手して下さい!』やん? どうなってんのって思ったよ、あの試合を見た時」

 11年にバイエルンへ加入した宇佐美は、プレシーズンに強豪クラブが集まって行われる親善試合アウディカップの決勝に先発出場。そこでスルーパスで決定機を演出するなど、名刺代わりの活躍を見せた。試合後には当時バルサに所属していたスペイン代表MFチアゴ・アルカンタラ(現バイエルン)から、ユニフォーム交換を求められた。

バイエルン時代に経験したCL決勝の“裏話” 「ピッチの中の空気ってどんなんや」

柿谷「CL決勝もいってるやんな?」

宇佐美「一応ベンチには座っていました」

柿谷「CL決勝のベンチに座れるなんて、そうそうおらんやろうし。その時は試合出てへんから、ベンチ座っても面白くないって考えたと思うねん。俺も19歳でベンチ座っていたら、『試合出てへんもん』って思っていると思う。でも、この先日本人がCL決勝の舞台におれるかって言われたら……。今、可能性があるのは(南野)拓実。今、若手がこんなに海外へ行っていても(10代でCL決勝のベンチは)無理なわけやん。俺、あんまりガンバの選手褒めたら怒られるから言わへんけど(笑)、貴史以上の実績ってないと思うから。それは自分がCLに出たっていうのもある。技術とかプレーどうこう以前。それは当たり前で、ほんまに俺の中では日本一やと思う。俺やったら、めっちゃ自慢してるもん(笑)

 2012年5月19日ドイツミュンヘンで行われたCL決勝。ホームスタジアムで開催された決勝に出場したバイエルンは、チェルシーを迎え撃つも試合は1-1で決着がつかず、PK戦に突入した。最終的には、3-4で“アウェー”となったチェルシーバイエルンを破って初優勝。この一戦を、背番号14の宇佐美はベンチから見ていた。

宇佐美ピッチレベルで見ていて、いい経験、濃密な経験だった。最後PK戦になった時も、みんなが『蹴りたくない』って言い出して。だから(GKのマヌエル・)ノイアーが3番目に蹴ってるんですよ。みんな逃げたんですよ、後ろ後ろに下がって。ミュンヘンホーム開催やったから負けられないっていうのもあったし、これぐらいの選手たちが蹴りたくないっていう『ピッチの中の空気ってどんなんや』と思った。(ピッチ)外と中の熱量の差はあった。でも、いい経験はできたけど、どっちかと言うと必要ないかなあ。思い出すこともないし、俺は日本人のCLベストは(内田)篤人くんの(シャルケ時代)ベスト4でいい。何もしてへんし。消化試合に1試合出ただけやし……。でも、めちゃくちゃいいところに座っていい景色を見せてもらった」

柿谷「誰もできひんし、誰もしたことない。やっぱりCLは凄い。W杯もそうやけど、ちょっと規模が違う。人生を懸けている」

柿谷が認める宇佐美の存在 「ないものねだりみたいなので、好きになってしまう」

 柿谷自身もバーゼル時代にCLに出場したからこそ抱いた特別な思い。その気持ちを受け止めながら、宇佐美は当時の“裏話”を交えながら冷静に振り返った。CL決勝でPKを蹴るということ。数メートル先で起こっていることが感じきれなかった。だが、その経験さえも確かな糧。だからこそ、柿谷も言葉を続ける。

柿谷「貴史のシュートセンスとかドリブルセンスって俺はないに等しい。俺もドリブルだってできへんことはないけど、ドリブルで人を魅了するというタイプではなかったから。FWとして必要な要素が詰まっている。(宇佐美は)もともとFWをずっとしていたわけじゃないのに。ないものねだりみたいなので、好きになってしまう。人を沸かせられるということに」

 2人が欧州から古巣へ復帰したことを、人は失敗と言うかもしれない。それでも、失敗を、過去を恐れずに今もサッカーを続けている。どんな「転機」も受け入れて道を切り開く。CL決勝の舞台で宇佐美が感じたことは、必ずや今につながっているはずだ。(Football ZONE web編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)

宇佐美貴史のバイエルン時代について柿谷曜一朗が自身の意見を強調した【写真:Getty Images】


(出典 news.nicovideo.jp)