元ヴェルディ監督で現在はボタフォゴのTMを務めるエスピノーザ氏が本田について語る
元日本代表MF本田圭佑が現地時間2月8日、ブラジルのリオデジャネイロに拠点を置くボタフォゴのホームスタジアムで地元サポーターに熱狂的な歓迎を受けてから、約2週間が経過した。周囲の興奮が収まる間もなくスタートしたトレーニングは、連日、着々と行われている。
本田の心をも動かしたと言われる、あのサポーターの熱意があったのはもちろん、そもそもボタフォゴはなぜ本田を獲得したのか。そして、33歳のレフティーにどんな期待をしているのか。
本田の入団会見で、サッカー部副会長、マーケティング部副会長とともに同席した、ボタフォゴのネウソン・ムファヘッジ会長は、充実した表情でこう語っていた。
「この契約は、サッカーだけでなく、スポンサー活動やビジネスの上でも大事なものとなる。本田はワールドカップ3大会出場という輝かしい経歴の持ち主だ。日本のクラブでもプレーしたし、CSKA(モスクワ)やミランのような、国際舞台でもそうだ。そんな彼を迎えて、我々みんなが名誉に思っている。
本田、ようこそ、ボタフォゴへ。君は必ずやここで輝き、我々に大きな喜びを与えてくれる。君の成功を祈っているし、ボタフォゴをますます向上させ、広めるために来てくれたことに感謝をしたい。ボタフォゴは非常に有名なクラブだが、本田は必ずやボタフォゴを、ブラジル国内だけでなく、外国でもさらに有名にしてくれるはずだ。そして、我々が必要としている、重要なタイトルをもたらせてくれるだろう。本田、どうもありがとう。」
会長自ら語る、ピッチの内外での本田効果への、期待の大きさたるや。一方、その熱狂から本田を守り、落ち着いた環境を作りたいと考えているのが、“ピッチの中の責任者”とも言えるボタフォゴのテクニカルマネージャー、ヴァウジール・エスピノーザ氏だ。
エスピノーザ氏は1997年にヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)で指揮を執ったこともあり、日本には今も大きな親しみを持ち続けている。彼は、本田の名前が浮上した時、日本で感じたことを思い出したという。
「当時、日本へはサッカーを教えに行ったつもりだったが、私自身、多くを学びもしたんだ。その一つはこれだ。日本の人たちの規律正しさ。やるんだと決めたら、その決意は非常に固く、献身する。そして、自分の仕事を愛し、心を込めて仕事をすることだ」
本田に司令塔の役割を期待「彼が個人技を発揮する時は、チーム力を高めるため」
そうした日本人の特徴は、日本人にとっては聞き慣れたことかもしれないが、ブラジルの、このサッカーチームに、そういうメンタリティーを取り入れるきっかけになれば、大きな意味があるはずだと、エスピノーザ氏は考えたという。
「そして、本田はここに到着してわずか数日で、その姿勢を示し、実践しているんだ」
では、プレーについてはどうか。エスピノーザ氏は本田のプレーをこのように分析する。
「本田はテクニックがあり、経験もあり、動ける。フィニッシュも上手い。セットプレーも蹴れる。彼は日本代表のスタメンだったし、何度もワールドカップを戦った。つまり、それだけのクオリティーがあるということなんだ。ただ、彼が直面するであろう困難は、“適応”だ。日本でも、他の国々でも数々のクラブでプレーしてきたから分かっているだろうが、細かいところにも重要なことがいろいろある。だからこそ、ここにいる我々の誰もが、その適応をなるべく早くするために、サポートしたいと考えているんだ」
入団会見の際、本田自身はボタフォゴにおける自分の役割は司令塔であり、前線の若い選手たちを生かすプレーがしたいと語っていた。
これについて、エスピノーザ氏は本田の言葉に同調している。
「まさにそうだ。プレーを統率したり、攻撃の起点になったり、FWがゴールを決めるための、より良いコンディションを提供する。自分でフィニッシュを決めない時には、チャンスメイクにも必要なすべての特徴を持っている。そしてもう一つ、私が見ていて好きな特徴がある。彼は個人技で魅せようとする選手じゃない。彼が個人技を発揮する時は、それによって、チーム力を高めるためなんだ」
鹿島などを指揮したアウトゥオーリ新監督も「多くの付加価値を与えてくれる」と期待
本田のボタフォゴデビュー戦に向けては、3月1日にスタートするリオデジャネイロ州選手権後期リーグの初戦ではないかと騒がれている。しかし、エスピノーザ氏は「すべてにおいては、ここぞという時がある」とし、そうした雑音を沈めようとしているようだ。
ただ、本田の労働ビザや契約書の法的な処理など事務的な作業が完了する頃には、しばらく試合に出ていなかったコンディションも必ずや準備ができているはずだと想定している。
本田獲得を歓迎していたアウベルト・ヴァレンチン監督が去った後、後任に就いたパウロ・アウトゥオーリ新監督は、日本の鹿島アントラーズやセレッソ大阪でも指揮を執った指揮官だ。
そんなアウトゥオーリ監督も「彼は模範的なプロだし、我々にはそういうお手本となる選手が必要なんだ。それに、技術面でもチームに多くの付加価値を与えてくれるだろう」と期待を寄せる。
チーム内でも歓迎ムードだが、エスピノーザ氏はやはり、本田への過剰なプレッシャーに配慮する。
「彼には、アドバイスというより『必要なことがあれば、私もみんなも手助けするから』というのを伝えたんだ。もちろん、通訳を介してだよ。何しろ、私が日本語で覚えているのは『コンニチハ』『アリガトウゴザイマス』、あとは大好きな『プリン』ぐらいだからね(笑)。そんなわけで私は一つ、確信していることがある。私と本田はこれから一緒に、たくさんのプリンを食べるってね(笑)」
こうしてユーモアを交えて語り、見守る存在がある。熱狂、期待、プレッシャー、尊重、そして温かさのなかで、本田の挑戦が始まっている。(藤原清美 / Kiyomi Fujiwara)
(出典 news.nicovideo.jp)
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