(出典 www.footballista.jp)



 2月15日に発売となった雑誌『SOCCER KING』3月号では、チャンピオンズリーグのラウンド16を完全プレビュー! 決勝トーナメントをより楽しむためのコンテンツWebで一部公開します。

 2シーズンぶり2度目の出場となるチャンピオンズリーグで、ライプツィヒクラブ史上初となる決勝トーナメント進出を果たした。優勝候補不在のグループGは4クラブの実力が拮抗していたが、ライプツィヒは最終節を残してグループステージ突破を決めた。首位通過という理想的な形で、クラブ史に新たな1ページを刻んだ最大の功労者は、今シーズンから指揮を執る32歳の智将ユリアン・ナーゲルスマンにほかならない。

 ライプツィヒといえば、飲料メーカーレッドブル」の潤沢な資金にモノを言わせて国内外の有望な若手を獲得し、クラブ創設からわずか7年で1部昇格を達成したことで各方面の反感を買った新興クラブだ。レギオナルリーガ(4部相当)に所属していた2012年から7年にわたりスポーツダイレクターを務めたラルフラングニックが掲げた「強烈なプレスからのカウンター」は、チームアイデンティティになっている。

 ナーゲルスマンはこの戦術を踏襲しつつ、局面によってはむやみに放り込まずに相手の出方を窺うような、ポゼッションを取り入れた戦い方をしている。ライプツィヒは1部昇格後、ほどなくして追う立場でなく、追われる立場になった。国内では引いて守る相手のほうが多く、速攻のチャンスは限られる。ゴール前の人海戦術を崩すには、狡猾さやクリエイティビティが必要とされるが、スタメンの平均年齢が23歳前後という若手主体のチームに老獪さを求めるのは酷な話だ。だからと言って、独力で局面を打開できるワールドクラスのアタッカーもいない。

 そこで指揮官は、中盤の構成力や連動性に活路を見出した。中盤をコンパクトに保ち、素早いパス交換で相手DFを引きつけながらサイドバックオーバーラップを促す。的を絞れなくなった相手DFの綻びを、公式戦29試合で25ゴールと絶好調のティモ・ヴェルナーや新加入のクリストファー・エンクンクというアジリティに優れたアタッカーが突いていく。たとえボールを失っても、素早いプレスですぐにボールを奪い返し、相手の陣形が前がかりになった隙を突いて得意のカウンターを繰り出す。ナーゲルスマンにとってポゼッションはプレスをかけるのためのスタミナ確保の時間であり、カウンターへの準備とも言える。こうした攻防一体のスタイルは、バイエルンの元監督で現在はマンチェスター・Cを率いるジョゼップ・グアルディオラの影響によるものだという。

 ラウンド16の対戦相手を率いるのは、そのグアルディオラライバルとして知られるジョゼ・モウリーニョだ。彼とナーゲルスマンにはいくつかの共通点があり、それは互いに意識していることだろう。機能美を追求した先に勝利があるという信条を持っている点では、ナーゲルスマンは結果至上主義的なモウリーニョよりもグアルディオラに近い。だが、選手としてほとんど実績を残せなかったという点はモウリーニョと同じだ。ナーゲルスマンは数年前まで「ラップトップ監督」の筆頭だったが、実は熱血漢であり、理論よりも人心掌握や駆け引きを重視するという点もまた、モウリーニョに通じるものがある。百戦錬磨の策士が率いるトッテナムに対して、ナーゲルスマンは胸を借りるつもりで果敢に挑むことだろう。

 モウリーニョの就任以降、上り調子のトッテナムに対して、ライプツィヒブンデスリーガで首位を明け渡し、DFBポカールでは3回戦で敗退した。イブライマ・コナテらの負傷やディエゴ・デンメの移籍もあり、年が明けてからは不安定さを露呈している。そのため、予想どおりの布陣や戦術で臨むとは限らないし、試合中に戦い方をガラリと変える可能性もある。モウリーニョも打ち合いもやむなしという姿勢でナーゲルスマンの挑戦を受け入れるかもしれないし、守備的な戦い方で出し抜こうとするかもしれない。初対決となる“似た者同士”の駆け引きが、試合結果を大きく左右しそうだ。

文=志原 卓

[写真]=Getty Images


(出典 news.nicovideo.jp)