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 このまま終わるとは思いたくない。サッカー元日本代表・本田圭佑のことだ。昨年12月23日、所属していたオランダ1部・フィテッセを退団。2020年6月までの契約を結んでいたが、わずか締結から6週間でチームを去ってしまった。

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 ロシア1部・CSKAモスクワに在籍していた当時の指揮官レオニド・スルツキ氏がフィテッセの監督に就任しており、その恩師の猛プッシュで入団に至っていたものの情勢が変わった。チーム低迷の責任をとってスツルキ氏が昨年11月29日に監督を辞任した。本田もツイッター上で恩師の辞任に追随する意思を示し「自分もここにいるべきではない」と英語でのコメントを動画で公開し、チーム退団を表明。何もインパクトを残せないまま「フィテッセ・本田」の歩みは終わりを告げた。

現在無所属状態も〝エアオファー〟は賑やか

 年が明けて2020年となり、現在の本田は無所属だ。スペインでのプレーを公の場でも望んでいると報じられているが、現状は芳しくない。

 ただ、相変わらず〝エアオファー〟だけは賑やかなようだ。本人希望のスペインからは1部リーガ・エスパニョーラのCDレガネス、そして同2部のUDラス・パルマスが「本田の新天地候補」として早々と国内外のメディアによって取り上げられている。

 特にレガネスに関しては元日本代表監督のハビエル・アギーレ氏が指揮官に就任していることもあって、点と線を強引に結び付けようとするフェイクニュースが痛々しい。「アギーレは日本代表監督時代から本田の能力について『彼はボランチも十分にできる』と高く評価していたのでオファーをかける可能性は高い」との見解を示すメディアもあった。

 しかし、冷静に考えてみてほしい。サッカー日本代表でアギーレ氏が監督を務めていたのは、スペインでの八百長疑惑で途中解任された2015年2月までだ。本田の能力を評価していたのは、もう6年近くも前の話である。現にフィテッセでの本田はボランチとして起用されたこともあったが素人目に見ても、ほとんど機能していなかった。そんなリアルタイムの能力にアギーレ監督とレガネスが本気で高い評価を与えているとしたら、天下のリーガ・エスパニョーラも地に落ちたものだ。申し訳ないが、彼らの見方は「節穴」と言わざるを得ない。

メディアが伝える〝エアオファー〟に世間は「またかよ」の反応

 知っての通り〝エアオファー〟が賑やかなのは、スペインだけではない。本田を高く評価する恩師スルツキ氏がロシア1部ルビン・カザンの監督に就任。一部のロシアメディアによれば、その流れでルビンの本田獲得プランが急浮上しているという。だが説明するまでもないだろうが、これも信ぴょう性は高くない。

 まだある。本田の新天地候補にはベルギー1部のシント=トロイデンVV(STVV)の名前も現地メディアの報道で挙げられていた。同クラブは日本企業DMM.com社の傘下となっており、新たなテクニカルディレクターとして本田がオーストラリアAリーグメルボルン・ビクトリーでプレーしていた間にチームの監督を務めていたケビンマスカット氏が就任したことで「さまざまな観点で脈深い」というわけだ。

 もう、あらたまってくどくどと述べる必要もないだろう。このSTVV移籍についての報道も昨年末に流れて以来、ここまで具体的な動きは何ら見られない。だから大半の人たちは胸躍らせることもなく「またかよ」とあくびを重ねている。ネット上では「十八番のエア移籍連発」と評する書き込みも数多く散見され、それが世の中における大多数の見解だろう。

フィテッセ退団のプロセスが悪印象

 FIFA国際サッカー連盟)から、かつて制度廃止前に公認ライセンスも得ていた経歴を持つ代理人(仲介人)の1人は「間違いなく本田さんは日本のサッカー史上で偉大なプレーヤーであり、リスペクトすべき人物ではあるが」と前置きしながらも、現状については次のように厳しい見解を示した。

「新天地探しで、かなり苦戦していると聞いている。残念ではあるが明らかに峠を越え、来年で34歳となるプレーヤー三顧の礼で迎える一流クラブはない。その点を認識しないと、彼は路頭に迷うことになってしまうと思う」

 しかも、その人物によれば「本田さんはフィテッセの退団のプロセスが、世界のサッカー関係者にあまりいい印象を与えていない」という。要は〝立つ鳥跡を濁さず〟ならぬ〝立つ鳥跡を濁す〟という格好になってしまったというのである。一体、どういうことなのか。

 前出の代理人はこう続ける。

「フィテッセでの本田さんはスルツキ監督が退団して以降、出番が激減。結局たったの4試合しか出場せず、辞めてしまった。恩師の後ろ盾がなければ、ポジション争いで勝ち残れる自信がないから逃げ出したと見られてしまうのは当然の話だ。フィテッセとの話し合いで円満に退団したとはいえ、これから獲得を検討する側にとってはどうしても本田さんの行動は弱腰に映ってしまう。仮に契約がまとまって入団を果たしても、彼はやりやすい環境が整わなければ再び同じように身を引いてしまうのではないか――。クラブの経営者はそのようなリスクも頭に入れなければならなくなってしまうからです。こうした観点から見れば、フィテッセの退団劇を見せつけられてからの本田さんに興味を示すクラブは、どうしても少ないと考えざるを得ません。本田さんの視野にはまったく入っていないと思いますが、国内Jリーグクラブも実際のところ獲得に関心を示さないと思います。個性が強過ぎるプレーヤーなので、Jリーグのように日本人主体のチームとなると編成面で難しくなってしまうからです」

 それでも「本田圭佑」のブランド力は依然として日本国内では高い。大手広告代理店の担当者ががっちりと脇を固めていると聞くし、さまざまな〝知恵〟を授ける優秀なプランナーも周辺にはいるようだ。代理人を務める実兄・弘幸氏とともに一丸となって水面下では、価値を低下させまいと本田の新天地探しに心血を注いでいる模様だ。

 しかも現状、無所属の本田を獲得するクラブには移籍金がかからない。本田を獲得することで日本企業のスポンサーセットで得られると考えれば、もしかすると〝巨大戦力〟と見るクラブも出て来る可能性はあるかもしれない。

本業以外で多忙な本田

 もっとも選手としては無所属になっていても「二足のわらじ」でサッカーカンボジア代表チームの実質的監督を務めていることを考えれば、本田が多忙な日々を過ごしていることに変わりはない。サッカーファンにはあまり興味のない話題かもしれないが、実を言えば本田はサイドビジネスが絶好調で「企業投資家」としての活躍も最近では目立ち始めている。個人投資会社のファンドを設立し、着実に利益を上げていることは経済界でも知られている話だ。

 最近ではツイッター上で「米国とイランの関係悪化」や「フィンランドの週休3日制検討案」など、さまざまな世界情勢についてもツイートを連発して話題を作っている。

 でも何だかんだと言って、やはり本業以外で話題になる本田に複雑な目を向けている人は少なくないはずだ。2020年東京五輪にOA(オーバーエイジ)枠での出場を目標として猛アピールを続けているだけに、無所属に甘んじている暇はない。「言うだけ番長」で晩節を汚すようなことにはならないように本田には何とか今後、起死回生のドラマチックな展開を期待したいところだ。

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フィテッセ時代の本田圭佑(写真:ANP Sport/アフロ)


(出典 news.nicovideo.jp)