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写真提供: Gettyimages

著者:秕タクヲ

アーセナルの指揮官、ウナイ・エメリの首が危ない

かつては世界中から憧れるサッカーを落とし込み、アーセナルに多くの功績を残したアーセン・ベンゲルと袂を分かち、新たな船出として招聘されたウナイ・エメリ。昨シーズンこそ痛みの伴う改革を行い、プレミアリーグ5位・ヨーロッパリーグ準優勝と一定の評価を得ることができたが、今シーズンからエメリ体制を懐疑的に見る識者が増え始めている。


主な理由は2つある。まず1つは「結局何がしたいのか分からない」ということだ。個人的にはこの現象は今に始まったことではなく昨シーズンから発生しており、昨シーズンのボーンマス戦(アウェイ)やレスター・シティ戦(アウェイ)を見れば明らかになるだろう。

そしてもう1つは「エメリ自身に不可解な行動や言動が多い」ということだ。メディアから選手とのコミュニケーションの部分で問題があるのではないかという声が噴出しているエメリであるが、私はそれ以前に「考え方」に問題があることを指摘したい。ここから更に深掘りしていこう。


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【Case.1】サウサンプトン戦後のエメリのコメント

私が初めて不可解であると感じたのは、昨シーズンプレミアリーグ第27節ホームで戦ったサウサンプトン戦である。この試合17分だけで2得点を上げ余裕の展開で前半を終えた。しかし後半は打って変わってサウサンプトンの攻勢を受けることになる。前半のムードは一体何だったのか。まるでサウサンプトンの方がホームなのではないかと思えるゲーム展開だった。後半ようやくシュートに持ち込めたのが85分であることからも後半調子を落としてしまったことは明らかだった。しかし、試合後エメリは次のように語った。

「我々は多くのチャンスを生み出した。(結果は2-0だったが)2点以上入っていてもおかしくなかったよ。」後半シュートが1本だったことをエメリはすっかり忘れたのだろうか。明らかにこの発言はいただけないものがあった。


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【Case.2】リバプール戦のフォーメーション

お次は今シーズンアンフィールドへ乗り込んで挑んだ第3節リバプール戦から。開幕2連勝と好スタートを切ったアーセナル。今シーズンは一味違うこと証明したいところだったが、その期待はリバプール戦で打ち砕かれた。それはスタートフォーメーションにあった。

この試合アーセナルはなんと「4-4-2」の中盤ダイアモンド型で挑んだのだ。中央を狭い間隔で守りやすい特徴があるこの布陣だが、最強の3トップ、そして超攻撃的なサイドバックを擁するリバプール相手にサイドをケアせずに中央で守りきろうとする戦法を取ったのだ。エメリの采配の意図が誰にも理解されることはなく、結果はもちろん1-3で敗戦となった。

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【Case.3】ウルブス戦での謎采配

最も理解しがたい行動と言動は第11節のウルブス戦だ。21分にピエール・エメリク・オーバメヤンのゴールで先制に成功したが、76分スローインの対応に遅れてしまい、ラウール・ヒメネスにゴールを許し痛恨のドローに終わった。

試合をふりだしに戻された展開の中、エメリは一同仰天の采配に出る。なんとキーラン・ティアニーに代えて、セアド・コラシナツというDF同士の交代を行ったのだった。ディフェンスラインを5枚で形成するウルブスに対し、なぜニコラ・ペペを投入してゴールをこじ開けに行かなかったのか疑問の目が向けられている。

またエメリはこの試合後、「悪い結果だが戦術的には私が思うように機能した」と語った。この発言はメディアファンを興ざめさせる引き金とにもなった。終盤同点に追いつかれてもFWの枚数を増やしもせず悠長にサイドバック同士の交代を行い全く効果なし。挙句の果てに32分に放った枠内シュートを最後にアーセナルの攻撃は息を吹き返すことはなかった。

一体エメリはどこに戦術的機能性を見出したのだろうか。90分通じて主導権を握り「勝つべくして勝った」と誰から見ても分かるチームになるまでまだまだ時間がかかりそうだ。


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ベンゲルが置き土産として残していった多様性の意味を履き違え、その多様性に蝕まれている。異国間のミスコミュニケーション、個人の感覚に頼ったのプレーの連続。見えてこないコンセプト。今はオーバメヤンの踏ん張りで何とか現在の順位を保てているが今後どうなるか分からない。トーマス・トゥヘルとの軋轢やドルトムントの去り際を鑑みるに彼は決して忠誠心は強い方ではない。このまま時が過ぎれば「あの時のアーセナルは強かった」と後世に語り継がなければならないかもしれない。



(出典 news.nicovideo.jp)