(出典 yytrend.work)



 サッカー日本代表FW南野拓実レッドブル・ザルツブルク=オーストリア1部)が絶好調だ。今月3日に行われた欧州CL・対リヴァプール戦では敵地・アンフィールドで1ゴール1アシストの大暴れ。UEFAが選出する第2節のベストイレブンに堂々の選出を果たすと、先日行われたカタールW杯アジア2次予選のモンゴル戦、タジキスタン戦でも計3ゴールを記録。クラブでの好調そのままに、日本の“新エース”と呼ぶに相応しい活躍を披露した。

 森保監督就任以降の南野の得点数はチームトップの10。この2次予選に限っても、全3試合で4ゴールを決めている。いやがおうにも注目が集まる状況だが、彼の強みは単純なシュートの精度だけではない。

◆質の高い動き出しは歴代代表FWのなかでも屈指

 今回南野が決めた3つのゴールは、いずれも相手DFの枚数が十分に足りている状況でのものだった。ましてやシュートを打ったのはすべてペナルティエリア内のゴール近く、あるいはゴール正面付近だ。相手DFのマークが最も厳しい場所であり、格下相手とはいえ通常はなかなかフリーにしてもらえないエリアである。そんな密集地帯で3点とも“相手のマークを外してフリーで決めている”という点にこそ南野の特徴が表れている。

 タジキスタン戦では、日本のアタッカー陣は相手の粘り強いマークに手を焼いた。強引に打ちにいって、相手のブロックに遭う場面も多く見られた。

 そんな展開の中でも、南野のゴール前でのマーク外しの技術は一級品だった。ボールを持った味方の利き足や体勢、所作、さらには相手DFのマークの付き方などによって、ラストパスが出てくる場所とタイミングを瞬時に判断。絶妙な間合いでマークを外し、ボールを引き出す。今回の3点すべてがそうであったようにワンタッチでのゴールが圧倒的に多く、それもこの上質な動き出しの技術があってこそのものだ。

 今回対戦した2チームは格下の相手ではあったが、冒頭で触れたCLの試合でも、南野の鋭い動き出しはリヴァプールの脅威となっていた。ゴールシーン以外でも、南野が絶妙なタイミングで危険なスペースに飛び出すことで相手マーカーが釣られ、味方が走り込むスペースを創出した場面が何度もあった。

 動き出しの質・タイミングが完璧だからこそ、必ずしも南野が受けられなくても、二次的に味方が飛び込むスペースが生まれ、チャンスを増やすことができるのだ。

日本代表でこそ磨かれる前線での繋ぎ

 そして、日本代表としてコンスタントに出場するようになってから本人が「意識している」と語るのが、“ビルドアップの中での繋ぎ”だ。特にモンゴル戦では、伊東純也らがボールを持った際に絶妙なタイミングで相手の間に顔を出してパスコースを作り、アタッキングサードでの潤滑油的な役割を果たしてみせた。

「代表ではアジアの引いた相手とプレーすることが多く(ザルツブルクでの試合と比べて)ポゼッションする時間が長いので、ビルドアップの際に“動き続けながらパスを受ける”意識が強くなったと思います。前線でスペースが無いので、良いタイミングで動いてパスコースを作って、そこで出てこなかった際にはもう一度動き直して。ヨーロッパでの試合とはやり方が少し違うので、(代表でプレーすることが)自分の成長にも繋がっていると思います」

 モンゴル戦の前半34分には右サイドで伊東が相手DFと対峙した際に完璧なタイミングでパスを引き出しワンツーに成功。最後は長友のゴールに繋がった。インサイドキックでの何でもないワンタッチパスにも見えるが、南野のフォローによって一気に相手3人を無力化したプレーだった。

「自分がうまく味方をフォローしてああいう形を増やせればスペースが無くても自分たちで崩せると思うので、もっと効果的な動きを増やしていきたいです」

 日本代表はこれまでのアジア予選でも、引いた相手を崩しあぐねる展開を何度も経験してきている。おそらく今回の予選でも、「押し込んではいるものの点が取れない」という状況は必ず起きるだろう。

 さらには本大会でも、相手にリードされて終盤を迎えた際には、引いた相手を連動して崩さなければならない場面が必ず出てくるはずだ。世界の強豪国と比べ体格が劣る日本代表は、ビハインドの終盤にロングボールを多用して押し込むという戦い方が使えない(やれなくはないが有効ではない)。そうなった時に、南野のように相手の間の僅かなスペースで味方の連携を誘発できる「前線のリンクマン」は必ず必要になってくるはずだ。

 日本で長らくエースとして君臨している大迫勇也もこのパスの引き出しと繋ぎを得意とする選手ではあるが、大迫はよりゴールに近い位置でプレーするのを得意としている。その大迫と中盤のアタッカー陣の間で南野が潤滑油のような役割を果たせれば、日本の前線の連動性は一気に高まるはずだ。当然、その流れの中から南野が前を向いて勝負できるシーンも増えるだろう。

 自分で決めきる得点力に加え、味方の化学反応をも誘発できる南野拓実ボールを持たずとも相手の脅威となれるこの男が、次世代のエースとなる可能性は十二分にあるはずだ。

取材・文/福田悠 撮影/藤田真郷



(出典 news.nicovideo.jp)