6-0と完勝した日本代表の全選手を5段階評価 中島にはやや物足りなさも…
日本代表は10日、カタール・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選のモンゴル戦(埼玉)に臨み、6-0で勝利した。前半22分にMF南野拓実(ザルツブルク)が、代表戦3試合連続となるゴールを決めて先制すると、そこからの18分間で4-0とリード。後半にも2点を追加して、危なげなくW杯予選2連勝を飾った。
シュート数「32対0」と圧倒するなど、日本が格の違いを見せつける一戦となったが、識者はどのように見たのか。1970年代から80年代にかけて活躍した「天才ドリブラー」で、解説者として長年にわたって日本代表を追う金田喜稔氏が、この一戦に出場した全14選手を5段階で評価(5つ星が最高、1つ星が最低)。完勝により総じて高評価となるなか、3アシストと輝きを放ったMF伊東純也(ヘンク)に5つ星を与えた一方、MF中島翔哉(ポルト)は3つ星評価にとどまった。
◇ ◇ ◇
<FW>
■永井謙佑(FC東京/→後半25分OUT)=★★★★
9月のパラグアイ戦(2-0)に途中出場した際には、永井のスピードを周りが意識しすぎて前方のスペースへのパスが多くなり、それが攻撃に閉塞感を生んだが、この日は左右に流れたり、大迫ほどではないがポストで起点になるなど連動するプレーが見られた。圧倒的なスピードはやはり魅力で、守備面でも“違い”を生む。ワンチャンスを生かした6月のエルサルバドル戦(2-0)に続き、先発出場した試合でゴールという結果をきっちり残しており、大迫とは異なるタイプのセンターフォワードとして少しずつ存在感を高めている。
1試合を通したチームへの貢献度はいつもどおり。遠藤のゴールをアシストした以外にも、得点につながる手前のパスなどで絡んでいた。その一方で気になったのは、これでもかというくらいドリブルをして“やりきる”のが中島の魅力だが、この試合では仕掛けても3人目でボールを奪われるようなシーンが何度かあった。相手がモンゴルだったため、決定的なピンチを招かずに済んだが、相手のレベルが高ければ致命的なシーンとなり得る。またシュート数も2本と、いつもに比べて思いきりが少しなかった印象だ。
アジアカップ以来のスタメン出場も「遠藤らしさを見せた」
61分間のプレーでチーム最多タイのシュート4本を放つなど、得点への高い意欲を示し、シャドーストライカーとしての質の高さを見せた。前半22分に決めた先制点は、序盤から一方的に攻めながらなかなかゴールを奪えない展開のなか、チーム全体に安心感を与えた大きな意味を持つ1点だった。また、長友の3点目につながった右サイドでの伊東との壁パスは秀逸。ボールを受けに行くタイミング、パスのコースやスピードも完璧だった。シャドーとして自らが動き出して仕掛けられるし、パスを受けて起点にもなれて献身的な守備もこなす。久保や中島もトップ下の有力候補だが、今の南野のプレーを見る限り外せないレベルだ。
■伊東純也(ヘンク)=★★★★★
これまで途中出場してきた試合では、自分のスピードやクロスという武器を示そうとやや空回りしてしまい、周囲とのコンビネーションを発揮できずにいたが、3アシストをマークした今回の試合では、逆にチーム全体から見て「使いやすい伊東純也」になっていた。欧州での経験が自信になっているのだろう。周りを見る余裕が生まれ、周りの選手を上手く使いながら最終的に“自分が生きる”というコンビネーションを見せることができていた。もちろん、今回の相手が実力差のあるモンゴルだったことは差し引いて考える必要はあるが、右サイドで決定的な役割を演じた。これがドリブルで抜いたと思っても最後にグッと体を寄せてきたり、足が伸びてくるようなハイレベルな相手と対峙した時に、同じクオリティーを示せれば本物だろう。
司令塔としてビルドアップの中心となり、ボールを奪われた後の切り替えの早さも見せていた。もっとも柴崎は、ここに通したら相手が狙ってくるという場所にパスは出さない。危険なポイントをよく分かっていて、ワンタッチでの短いパス交換からミドルレンジに切り替えてサイドを変えたり、速いパススピードで相手が狙っていないところに出してみたり。時に無理をしてでも、相手の狙いを“外す”ところに、サッカーセンスの高さを感じる。今や外せない選手だが、あとはいつも指摘しているミドルシュートの意識のみ。この相手に0本では、やはり物足りない。
9月の2連戦では橋本がボランチとして好パフォーマンスを見せたなか、アジアカップ以来のスタメン出場で持ち味を見せた。攻守における切り替えの早さ、ピンチの芽を摘む状況判断力、球際でのフィジカルの強さ、攻撃の第一歩としてのプレーなど、どれを取っても遠藤らしさを見せたと言える。所属するシュツットガルトでは出場機会をつかめていないが、この試合に関してはその影響を感じさせなかった。
最終ラインで冷静に統率した吉田 「相手に攻める力がほとんどなかったが…」
序盤から長いランニングでアップダウンし、積極的に攻撃参加。シュートの意識も高く、いつも以上に得点を狙っていた結果が10年ぶりの代表戦ゴールにつながったのだろう。コンディションの良さを感じるプレーぶりで、10年という長きにわたってレギュラーを張り続ける実力を改めて証明した。
相手にほぼ攻める力がなかったなか、守備面での仕事はほとんどなかった。最終ラインからのビルドアップでチーム全体を落ち着かせつつ、前半29分にはCKの流れから追加点。キャプテンとしての役割を全うした。
■冨安健洋(ボローニャ)=★★★★
吉田とのコンビは安定しており、危ないシーンは皆無。的確なパスで攻撃陣にボールを供給するなど、充実ぶりを示すパフォーマンスだった。それだけに試合終盤の負傷退場は残念だが、タジキスタン戦では代わりに出る選手の奮起に期待し、センターバック陣の競争をさらにハイレベルなものにしてもらいたい。
左の長友と同様、立ち上がりから積極的に攻撃参加。前半29分の吉田のゴールをアシストした以外にも、伊東との連係で右サイドを攻略して得点シーンを演出した。攻守に隙のないプレーを見せ、タッチライン際を終始支配した。
被シュート0本と危ないシーンはほぼなかった。GKとしてのパフォーマンスが問われるような試合内容ではなかったが、9月の2連戦に続いて3試合連続の無失点という事実は、評価に値する。
<途中出場>
■安西幸輝(ポルティモネンセ/DF/←後半12分IN)=★★★
後半途中から出場したなか、右サイドバックとしてプレー。組み立てのなかでのつなぎ、攻撃への絡み方などはポルティモネンセで試合に出ていることが生きているように感じた。守備面では酒井の域にはまだ達しないが、攻撃面ではセンスを発揮しており、狙っているパスの質も面白い。両サイドをこなせる人材として、長友と酒井にも刺激を与えているはずだ。
代表初ゴールの鎌田 「得点シーンでのポジショニングは素晴らしかった」
■鎌田大地(フランクフルト/FW/←後半16分IN)=★★★
質の高いプレーはあまりできなかったが、得点シーンでのポジショニングは素晴らしかった。いつも準備していないと取れないポジションであり、そこできっちりと代表初ゴールという結果を残したことは大きい。
■原口元気(ハノーファー/MF/←後半25分IN)=評価なし
残り20分で投入されたなか、自分が何をやりきらなければいけないのかを理解したプレーぶりだった。原口らしいランニングで背後を狙い、ドリブル突破を試みる。献身的な守備でも貢献するといういつものスタイルが、チームのギアをもう一段階上げていた。そうした役割が求められていることを、W杯という大舞台を経験した本人がよく分かっていて、森保監督もリズムを変えたい時のオプションとして上手く使っている。これは堂安にも久保にもできない、原口の武器だろう。
[PROFILE]
金田喜稔(かねだ・のぶとし)
1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。(Football ZONE web編集部)
(出典 news.nicovideo.jp)
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