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序盤戦好スタートで上位争いも…直近14試合で「1勝4分9敗」の急失速

 9月23日、J1名古屋グランパスの風間八宏監督が契約解除となり、後任としてマッシモ・フィッカデンティ新監督が就任することが正式発表された。9月20日の午後に解任報道の第一報が流れ、そこから3日後の正式発表は、新指揮官との契約条項の詰めの作業が遅れたことなどが考えられるが、それ以前にタイミングを逸した印象の強い「監督交代劇」に、クラブのドタバタぶりが感じられる。中長期的な視点で攻守一体となった攻撃的なサッカーの構築を目指した風間監督から、堅守速攻を武器に結果を残してきたイタリア人のフィッカデンティ監督への大幅な方針転換は、なぜ起きたのだろうか。

 今季序盤の名古屋は開幕3連勝を飾るなど好スタートを切り、5月17日リーグ第12節川崎フロンターレ戦(1-1)を終えた時点で7勝3分2敗の2位につけていた。優勝候補の一角にも挙げられていたが、5月26日に行われた第13節の松本山雅FC戦に0-1で敗れると、歯車が狂い始める。それ以降の14試合で奪った勝ち点はわずか「7」、1勝4分9敗という急失速ぶりだ。

 風間監督の就任以降、一貫してサポートしてきた名古屋の小西工己社長でさえ、「本当にしっかりとプロセスを踏んで、選手たちを育ててくれた。しかし客観的なファクトとしては、皆さんご承知の通りの成績となっている」と厳しい見方をせざるを得ないほどの低迷に、監督解任という判断が下されたのは当然の結果と言えるだろう。

 しかし今回の場合、問題はなぜ“今”だったのかだろう。リーグ戦で勝てなくなって約4カ月の間、大ナタを振るう機会は何度もあったが、結果的に残留争いに片足を踏み入れ、残り8試合という難しい時期での監督交代となった。クラブの判断を鈍らせた一因を挙げるなら、風間監督が見せてきた“可能性”が足を引っ張ったところがあったと言える。

 独自の理論で、攻撃的なスタイルチームに植えつけた指揮官サッカーは、良い時には良い、悪い時には悪いというゲームの質の差が明確で、未勝利が続く日々のなかでもやりたいことさえ噛み合えば輝きを放つ。リーグ第22節で2連覇中の王者・川崎を3-0で一蹴したが、たとえこの時の川崎が不調だったとしても、それまでの10試合で4分6敗のチームが実現できるものではない。過去2年の指導の積み重ねとチーム哲学の浸透、そして年々強力になっていった補強選手たちのクオリティーによって、“風間スタイル”の名古屋は確かなポテンシャルを秘めていた。

風間体制に見えた限界 “夏の補強ブースト”もなく停滞感を払拭できず

 しかしそれを、いついかなる時でも発揮できるものに昇華させられなかったところに、風間体制の限界が見える。

 今季、指揮官の口から幾度となく発せられた言葉が「あとは決めるだけ。仕留めきることさえできれば」というものだった。確かに数字上でも、あるいは実際の試合展開を見ても、名古屋は高い確率でゴール前でのチャンスを生み出すことはできていた。だが、結果としてそれを決めることができずに、多くの勝ち点を逃している。勝負に“タラレバ”は禁物だが、勝てない日々が続くなかで、いつしかそのタラレバを繰り返してしまった。

 風間監督のチームは自分たちの可能性を信じ、イメージどおりのサッカーができた時のための修練を積み続けてきた。自分たちの土俵に持ち込むための練習ではあったのだが、現実として相手の堅守速攻の前に持ち味を消されることが多かった。

 またチームウィークポイントを組織でカバーするのではなく、選手個々のクオリティーに委ねる傾向も強かったため、主力の負傷などがそのままチーム力の低下につながることもあった。

 さらにシーズン途中の戦力補強も、DF太田宏介らを獲得したものの過去2年に比べると静かなものに。J2を戦った2017年夏にはFWガブリエルシャビエルを獲得し、苦戦を強いられたJ1昇格初年度の昨季もDF丸山祐市やDF中谷進之介、MFエドゥアルド・ネットらを大量補強し、なんとかJ1戦線に生き残った。その貯金をもって今季開幕前にはDF吉田豊、MF米本拓司、そしてMFジョアン・シミッチを獲得しているのだから、戦力的には十分と言えるものだったかもしれないが、“夏の補強ブースト”がかけられなかったことで、チームに蔓延していた停滞感を払拭することはできなかった。

 こうした状況を踏まえれば、これまでJ1のFC東京サガン鳥栖を率い、規律と組織力で勝負してきたフィッカデンティ監督をクラブが求めたのは当然の選択と言えるかもしれない。

残り8試合でプレーオフ圏の16位と勝ち点差「4」、自動降格圏の17位と勝ち点差「7」

 目指すサッカースタイルが正反対との指摘はもっともであり、リーグ戦残り8試合というタイミングで、堅守速攻で実績を残してきた監督に手綱を委ねるのは少々極端だ。しかし、風間体制下で2年半以上にわたってやってきたことが停滞を招いている以上、その問題点を解決するためにドラスティックな変化が必要だったのも、また事実である。

 クラブはギリギリまで、風間体制での“V字回復”を画策した。だが土壇場で変化の見込みがないと判断し、真逆の劇薬を投入することになったというのが、今回の監督交代劇の背景だ。リーグ第26節終了時点で11位の名古屋は、J2とのプレーオフに回る16位鳥栖とは勝ち点差「4」、自動降格圏の17位松本とは勝ち点差「7」。予断を許さない状況のなか、リーグ終盤戦での名古屋フロントの“決断”はチームを浮上させる力になるだろうか。(Football ZONE web編集部)

風間監督にかわりフィッカデンティ監督が就任【写真:Getty Images&荒川祐史】


(出典 news.nicovideo.jp)