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【現地発コラム】CL開幕戦で激突、南野のザルツブルクが伊東のヘンクに6-2と大勝

 日本代表MF伊東純也(ヘンク)にとって、ほろ苦いUEFAチャンピオンズリーグ(CL)デビューとなった。

 現地時間17日の敵地ザルツブルク戦、夢にまで見たはずのCLだったが、「特になんにもない」と答えざるをえないほどの大敗を喫してしまった。2-6。様々な思いを胸に、伊東自身も、チームもこの試合を迎えたはずだった。大舞台であっても「普段と変わらずに入れた」と話していた。

 だが、普通の展開にはならなかった。次から次へとプレスを仕掛けるザルツブルクの襲撃を回避することができずに、ヘンクは何度も何度もピンチを迎えていく。開始2分で失点すると、「最初の1点で、みんなが消極的なプレーになって、という流れだった」と崩れていってしまった。

「自分としても初めて、あんな簡単に失点するというか、こんなに大差で負けたこともなかったですし」

 チーム全体が飲み込まれ、伊東もどうすることもできない。何度か敵陣でボールを奪い返し、そこから攻撃につなげようというシーンもあった。味方からのパスを引き出して、仲間に預けるプレーもいくつかあった。だが、試合の流れを一変させることはできなかった。

「まずポゼッションのところで上手くいってなくて……。攻撃もスムーズにできてなかったなと思います」

 そんななか悔やまれるのは、1-3で迎えた前半43分のシュートシーンだ。右サイド深くまで侵入した右SBからのマイナス折り返しは、完全にフリーだった伊東のもとへ。だが、右足ダイレクトで放たれたシュートゴールの枠を越えて飛んでいってしまった。

「あれはチャンスだったので決めなきゃいけなかった」

 逃したチャンスの大きさは、誰よりも本人が一番分かっている。あそこで決めていたら2-3。試合の流れを変えることもできたはずだった。逆にザルツブルクは、直後に2得点を奪って前半だけで1-5に。試合の行方は決まってしまい、伊東はハーフタイムでベンチに下がることになった。「しょうがないかなと。負けてたんで、どっか変えなきゃいけないし」と振り返る。頭では理解できる。でも、なぜそれが自分なのか。納得いくわけはないし、悔しくないはずもない。

4年半前に南野が味わった屈辱 「技術のレベルはめっちゃ高い」

 そういえば、初めての欧州カップ戦にスタメン出場したものの、前半だけで交代した1人の日本人選手がいた。2015年2月、その同じような経験をしたのが、この日対戦相手として躍動していたザルツブルクの日本代表MF南野拓実だった。

 UEFAヨーロッパリーグのラウンド32、ホームスペインビジャレアルと対戦したゲームだった。スタメン出場した南野は、積極的に攻守に動き回っていたが、プレスはかわされ、攻撃でもボールを失い続けていた。そして前半だけで交代。試合後、「(相手の)技術のレベルはめっちゃ高い。守備は普通に激しいですし。そんななかでもしっかりボールをつないで前に運べる、シュートに持ち込めるぐらいになれないとやっていけない」と反省の弁を口にしていた。

 そして「国際大会の高いレベルで試合をするために欧州へ移籍したと思うが、実際にやってみて意識が変わったり、何か見つけたことは?」という記者の質問に対し、「やっぱり今言ったことがすべてですし、そういうのを意識して今後も、こういう高いレベルのなかでやっていけるようにしていければいいかなと思います」と、今後に向けた思いを明かしてくれた。そして南野は常に上を目指し、幾度の厳しい試合を経験した。あの時から、4年半もの時間が経っている。ヘンク戦での南野は、あの日、相手にやられていたプレーを見事に自分のものとして、ピッチ上で体現していた。

 伊東はこの日、その南野がいたザルツブルクを相手に、思い描いたプレーはできなかったかもしれない。

「今日は戦略的に、中にずっといろと言われていたので、難しかったなというのはあります。ウチのサイドバックが上がるスペースを空けたかったんだと思いますけど」

 そう振り返っていた。チームとして求められている役割がある。それをこなしながらも、自分のプレーを出していくことが求められる。今後どうなるかは、これからの取り組み次第だろう。

 伊東も、まだまだここからなのだ。

「次、また頑張ります」

 最後にそう短く言葉を残して、ミックスゾーンを去っていく。そこには、CLという最高峰の舞台で戦い続けるための決意が込められていたはずだ。もっと強くなって、もっと怖くなって、もっと賢くなる。相手を飲み込むだけの力を身につけてみせるために――。(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

CL開幕戦で激突したヘンクMF伊東純也とザルツブルクMF南野拓実【写真:Getty Images】


(出典 news.nicovideo.jp)