(出典 birdseyefc.com)



若手と23歳以上の選手たちを融合 “経験”と“本気の勝負”を両立させた点は称賛に値

 森保一監督率いる日本代表は、コパ・アメリカ南米選手権)のグループリーグで3位となり、同順位の成績でペルーとパラグアイを下回り敗退が決まった。経験の浅い東京五輪世代中心のメンバーで、本気の南米勢を相手に2分1敗という結果は上々とも言える。選手たちは経験を積んで逞しさを増した一方、指揮官の対応力に一抹の不安を残す大会となった。

 今大会の日本代表は選手の拘束力がなく、所属クラブに派遣義務もないため、DF吉田麻也サウサンプトン)やDF長友佑都ガラタサライ)、MF南野拓実(ザルツブルク)、FW大迫勇也ブレーメン)らが未招集。そのなかで東京五輪世代の若手を中心に編成し、13人が初招集となった。

コパ・アメリカの舞台で戦えるのは、経験の浅い選手にとって非常に学ぶべきことが多い」

 そんな指揮官の言葉どおり、選手たちは1試合ごとに成長を遂げた。17日のチリ戦で0-4と大敗するも、20日のウルグアイ戦で2-2とドロー。勝てば決勝トーナメント進出というエクアドル戦では惜しくも1-1に終わったが、短期間で自信を深めていく様は逞しくもあった。

 東京五輪世代がベースとなるなか、森保監督は五輪本大会での“オーバーエイジ枠”(23歳以上)にあたるMF中島翔哉(アル・ドゥハイル)、MF柴崎岳(ヘタフェ)、DF植田直通(セルクル・ブルージュ)の3人を3試合連続でスタメン起用。彼らを軸に据えながら、FW岡崎慎司レスター・シティ)とGK川島永嗣(ストラスブール)のベテランコンビも起用し、若手と融合させながら“経験”と“本気の勝負”を両立させた点は称賛に値する。

3試合で共通して見えたのは試合中の対応遅れ、チリ戦では崩れたバランスを修正できず

 各セクションで“オーバーエイジ枠”の選手を起用し、結果的にGK小島亨介(大分トリニータ)、DF菅大輝(北海道コンサドーレ札幌)、MF伊藤達哉(ハンブルガーSV)、MF松本泰志(サンフレッチェ広島)、MF渡辺皓太(東京ヴェルディ)の5人は未出場に終わった。それでも2020年東京五輪に向けて強い競争意識を植え付け、ポジション争いを活性化させた点はポジティブに捉えていい。

 南米勢を相手に11人が代表デビューを飾り、DF杉岡大暉(湘南ベルマーレ)やDF板倉滉(フローニンゲン)、MF久保建英FC東京レアル・マドリード)、MF三好康児(横浜F・マリノス)など、今後A代表にも食い込みそうな選手の存在は収穫だろう。

 選手たちは貴重な経験を積んだが、それは指揮官にも同じことが言える。森保監督にとっても手腕が問われる場となり、チリ戦の大敗から短期間で修正を施し、ウルグアイ戦に間に合わせた点は称賛に値する。2失点を喫したものの、陣形をコンパクトに保ちながら守備ブロックを形成し、強豪と互角の打ち合いを演じた。

 その一方、3試合で共通して見えたのは試合中の対応遅れだ。今大会は4-2-3-1を主戦システムとして採用し、チリ戦では左サイドハーフに中島、右にFW前田大然(松本山雅FC)を起用。しかし、2人は守備への戻りが遅れてぽっかりとスペースを作り、そこから簡単に侵入を許した。崩れたバランスに修正を施すのは指揮官の仕事だが、結果的に2ボランチや両サイドバックの負担が増すなかで失点を重ね、最終的に4失点を喫している。

選手個々の意見が異なる場合、チームに一つの方向性を示すのが指揮官の仕事だが…

 ウルグアイ戦では2度リードしながらも追いつかれ、終盤には相手の圧力を受けてクリア一辺倒の時間帯が続き、修正を施せないまま終えた。チリ戦から一転、両サイドハーフの中島と三好は献身的な守備を見せたなかで疲労が蓄積し、後半途中から後手に回る場面が増加。しかし、指揮官が真っ先に代えたのはトップ下のMF安部裕葵(鹿島アントラーズ)だった。後半38分に三好に代えて久保、同42分にDF岩田智輝(大分)に代えてDF立田悠悟(清水エスパルス)を連続投入するも、すでにチーム全体が疲弊しており、状況が好転しないまま試合を終えている。

 エクアドル戦では、相手の前線からのプレッシングを受けてGK川島にパスを戻す場面が増加。後方からつなぐ意識は見えたが、そのパスを奪われて何度もピンチを招いた。さらにGKからロングボールを蹴っても相手に拾われ、再び攻撃に晒される悪循環に陥り、その状況でチームに方向性を示せなかったのは指揮官に一因があるだろう。また、グループリーグ突破にはゴールが必要な状況のなか、同じポジションでの選手交代を続け、後半43分の前田投入とともに2トップへ移行。短い時間のなかでチャンスを作ったが、終了間際の決断は遅すぎた感も否めない。

 大会を通じて言えるのは、チームの方向性を示せない時間帯が見られた点だ。当然、試合では選手個々の状況判断も求められる。しかし、それぞれの意見が異なる場合もあり、試合中にそれをすり合わせるのは困難だ。そうした時、チームに一つの方向性を示すのが指揮官の仕事だが、その点において一抹の不安が残った。

 世界を体感し、短期間で飛躍を遂げた若い選手たちの未来にロマンが感じられたなか、指揮官にとっても貴重な経験を積んだ大会になったと言えそうだ。(Football ZONE web編集部・大木 勇 / Isamu Oki)

今大会を通して選手たちは1試合ごとに成長を遂げた【写真:AP】


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