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ベルギーリーグ・シントトロイデンで1シーズンを戦った遠藤航と、元日本代表・岩政大樹の『PITCH LEVELラボ』対談。後編は、日本の守備と世界の守備の違いについて――。

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前編はこちら「遠藤航が体感した、世界と日本の守り方の違い」

■海外のサッカーを観てると「カバーの意識がない」ように見える

岩政:この対談をするにあたって『PITCH LEVELラボ』のほうにたくさん質問が来ていて・・・ひとつだけ。「欧州の守備のやり方(1対1重視)、日本の守備のやり方(チャレンジカバー)、それぞれのやり方の長所と短所、日本代表が目指すべきやり方を教えてください」ということなんですが、――やっぱり向こうは1対1の感覚は強いですか。

遠藤:ありますね。

岩政:これは、レベルによっても違うかもしれないんですけど、海外のサッカーを観ているとカバーの意識は少ないな、と感じるんです。例えば、一人がかわされましたとき、そのあと誰もカバーポジションを取っていない、とか。

遠藤:(日本のようには)取っていないですね。

岩政:ただ、反応が早い気がする。

遠藤:確かに、そうですね。

岩政:この二つの感覚、ありますか?

遠藤:あります。言い方は悪いんですけど「なんとかできちゃう」みたいなところはあります。やっぱり能力がある、と思いますね。

岩政:能力か。それは、日本だと・・・何ていうのかな・・・かわされた瞬間に(フォローするまで)ひと呼吸ある、向こうはかわされた瞬間に次の選手が「あ、来そうだ」という、スタートが早いというか。ポジションはあまり取れていなくても、――能力を含めてですけど――瞬間的に次が来ているような気がしてるんですよ。

遠藤:そうですね。1対1のシチュエーションが多いので・・・

岩政:ああ、そうか。逆にね。

遠藤:その感覚が優れているというか。ポジショニングが悪くても、「こいつ抜かれそうだな」「あ、この持たれ方だとここくるな」みたいな、予測力が、向こうの選手は優れていると思うんですよ。

岩政:ああ、なるほど

ポジショニングよりも危機察知能力を重視する

遠藤:だから、そのタイミングで出ていける。「あ、ここが抜かれそう」という危機察知能力はすごくて、人を見ながらでもできてしまう。あとはよく言われますけど、最後に足を伸ばす、最後に伸びる、届く。結局、「1対1を極めている感」があると言えばいいのかな。日本の場合は、抜かれそうになったら「ボールに行く」というより「ここのスペースを埋めに行く」。それで持たれてしまって、それこそその「ひと呼吸」で、もう一個前に行かれてしまうみたいな感覚はあるかもしれないですね。

岩政:なるほどなるほど。確かに。うん、そうかもしれないですね。

遠藤:日本人の守り方は、どうしても「抜かれないようにしなきゃいけない」というイメージありすぎて、ボールに行くより、まずスペースを埋める、(埋めた選手の)スペースを埋める、という意識がある気がします。

岩政:そうだね。

遠藤:外国人の選手って結構、1対1で前を向かれたシーンでも、どんどんチャレンジをして足を出しに行きますよね。それでボール奪えるときもあるし、もう本当に簡単に抜かれるときもある(笑)。日本は我慢して、我慢して、我慢して(スペースを埋めて、埋めてと連動して)、最終的に理想どおりに追い込んでクロスカットできても、実はコーナーキックになってしまってる、みたいなときがあるじゃないですか。

岩政:うん、うん。

遠藤:でも、外国人選手は1対1で奪える可能性がある、という。そこにある感覚――よりボールを奪うチャレンジという感覚は、海外の選手のほうが持っているイメージがあります。日本人のほうが、より慎重に、抜かれないことを第一に考えた守り方をしてるイメージがありますね。

岩政:ああ、そうか。逆に言うと、「取りに行く」と思っているから、空いたスペースに来るタイミングがわかるというのもありますよね。

遠藤:そうですね、はい。

岩政:そうかそうか。待っているのに抜かれるから遅くなるのか。

遠藤:そこは、あるんじゃないかな、と思います。

岩政:日本の場合は、1対1をやって、また次の1対1をやっての繰り返しになるんだけど、海外の選手は、例えば抜かれた瞬間に、ドンドンドンって次の選手が来て、来て・・・・。その感覚があるわけか。

遠藤:そうですね。

岩政:確かによりボールに行っているというのはありますね。

遠藤:加えて、そのそもそもの1対1のシチュエーションでも奪えそうだったらすぐ足を出して、ボールをつつくというような能力はみんなすごく高いですね。

岩政:これは、どちらにも良さがあると思うんですけど、うまくバランスが取れたらいいですね。

遠藤:そうですね。

海外で覚えた「よりボールにチャレンジする」ということ

岩政:昌子(源)選手がワールドカップで、ヨーロッパ組のメンバーと組んだとき「感覚がちょっと違った」と仰っていたんですね。日本人が海外に行って、そこで学ぶことによってこの対応の仕方なんかを――今は「待って抜かれない」が原則になっていますけど――、日本人流にアレンジして「個人の対応の原則」みたいなものを作ってもらいたいです。これは僕にはできないから(笑)

遠藤:いえいえ(笑)。ただ、僕も中盤をやるようになってからは、よりボールにチャレンジ行くことはすごく意識しました。最初の頃はどちらかというと、抜かれないような守備の仕方でプレーをしていましたけど、高いレベルになるとこの状況でも奪えちゃうわけで。最後に足を出して、つついて、マイボールにできる能力ですよね、それは。そして「抜かれたらカバーいてくれるでしょうくらいの」気持ちでやっているというか。

岩政:実際、いますしね。

遠藤:はい。だから結構、割り切ってます。抜かれても100パーセントでスプリントして帰れば最後は間に合う、くらいの感覚です。

岩政:そうなると、個人戦術、原則として、エリアポジションの選手によって違う説明の仕方をするというのはありですね。

遠藤:ありですね。

岩政:中盤はもっと行っていいよ、DFラインは中盤が交わされたらディレイしよう。中盤はその間に帰ってくるように・・・みたいな。

遠藤:そうですね。

岩政:これも整理していったら、日本らしいサッカープレーモデルができますね。対世界を見て抑えるべきベースとなる原則。なるほど、いいですね。

遠藤:確かに。ポジションによって、プレーの仕方が違うと思いますし、今、ご指摘されたように、高いポジションなのか、後ろ目なのかといったエリアによっても変わりますし。そこは判断が一番面白いところかな、って思いますね。

岩政:そうですね。これはまた次にお願いします。いやー面白かった。

遠藤:こちらこそ、まだ2時間くらい話せそうです(笑)

本対談のフル動画は岩政大樹の『PITCH LEVELラボ』でご覧になれます! 次回は川崎フロンターレ・大島僚太さんと「ボランチの原則」について配信します】

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遠藤航。1993年2月9日生まれ、湘南ベルマーレ、浦和レッズで中心選手として活躍し、2018年よりシントトロイデンでプレー。日本代表としてもロシアW杯、先のアジアカップなどに選出。(写真:写真:JFA/アフロ)


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