(出典 irodori-terrace.com)



CLマンU戦の2ゴールを見て「ルパン三世」のシーンを思い出す

 ルパン三世のある場面のことを考えていたら、原作者のモンキー・パンチ氏の訃報があってちょっとびっくりした。

 思い出していたのは、アニメではなくて漫画のほう。ルパンと敵の決闘シーンだ。

 テーブルの上に双方の拳銃を置いて、その上に箱だか帽子だかを被せる。そして1、2の3で拳銃を取って撃ち合うというものだったと記憶している。敵はその決闘で連戦連勝。実はタネがあって、拳銃を握った瞬間に箱だか帽子だか(記憶が曖昧ですみません)から抜き取るのではなく、中からそのままズドンとやる。抜き取らないぶんだけ速いという理屈だ。

 敵と対峙するルパン。ところが、次の1コマで敵は死んでいる。ルパンは拳銃を放り投げて「なんだ、簡単じゃねえか」と言いながら部屋を出て行く。敵はいつものやり方をしていて、ルパンは普通に拳銃を抜いてから撃っているのだが、それでもルパンのほうが断然速かったというオチである。

 なぜ、この場面を思い出していたかというと、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝マンチェスター・ユナイテッドとの第2戦で、リオネル・メッシの得点シーンを見たからだ。前半16分と20分に左足、右足と往復ビンタのような2ゴールを叩き込んで早々に試合を決めてしまった。

 メッシが世界最高の選手と言われるようになって、かれこれ10年ぐらい経過している。その間、「メッシ対策」がいろいろあった。右側のハーフスペースでパスを受けて突破にかかるメッシに対して、センターバックを早めに前に出す方法は幾分か効果を発揮していた。しかし、ルイス・スアレスバルセロナに来て、デンと中央に居座られると、センターバックを無闇に上げるわけにもいかなくなってしまった。それ以降、有効な「メッシ対策」はない気がする。

 メッシを制限できないのは、スペースを完全に消すことができないからだと思う。「スペースを消す」は言い方にすぎず、サッカーで“スペース・ゼロ”はありえない。実際、メッシボール1個分の隙間にシュート打ち込み、パスを通してしまう。

過去10年でメッシC・ロナウドがCLを合わせて7回制覇

 メッシを封じるには、試合から消してしまう以外ない。CL準決勝で当たるリバプールは、バルセロナに対して攻め切れるかどうかがカギだ。攻撃に次ぐ攻撃でバルサを防戦に追い込んでしまえば、メッシの脅威はカウンターアタックに限定できる。これはこれで相当な脅威には違いないが、フィルジル・ファン・ダイクとナビ・ケイタに望みをかけるほかない。

 アヤックスユベントスが敗れたので、“CL個人4連覇”がなくなったクリスティアーノ・ロナウドもまた、封じるのが困難なストライカーである。ロナウドの場合は空中戦がどうにもならない。ペナルティーエリアの中で桁外れに俊敏でジャンプ力が抜群。空中は組織で守りようがないので、ボールを“ツボ”に入れられたらロナウドのヘディングを防ぐのは至難なのだ。

 空飛ぶロナウド、地を駆けるメッシ――。ここ5年のCLで優勝したのはロナウド4回、メッシ1回。過去10年で見ても、7回はロナウドメッシの優勝だ。つまり、CLはロナウドメッシのいるチームが優勝する大会と言っていい。この“規格外の巨人”とどう戦うかが、優勝を目指すその他のチームにとって最大の課題とも言える。(西部謙司 / Kenji Nishibe)

ユナイテッドとの第2戦、2ゴールを決めたバルセロナFWメッシ【写真:Getty Images】


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