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久保建英については、あらためて紹介する必要はないだろう。“和製メッシ”と言われ、日本代表の各年代でも飛び級で招集され、今年5月にポーランドで開催されるU-20W杯の主力の選手だし、来夏の東京五輪でも活躍が期待される逸材だ。

これまでも10代でJリーグデビューして脚光を浴びた選手は数多い。例えば香川は密集地帯でもDFの足の届かないところにトラップし、マークをすり抜けてゴールを量産した。井手口や堂安も似たタイプと言え、ドリブル突破を武器に海外移籍を果たした。

もちろん久保も、今シーズン復帰したFC東京では、右サイドゴールライン上から2人のマークをすり抜けてシュートを放つなど輝いている。4月10日のルヴァン杯・鳥栖戦では、右サイドの難しい角度からのFKを直接決め、シーズンゴールチームを勝利に導いた。

そして14日のJ1リーグ鹿島戦である。ゴールこそ決められなかったが、3ゴールすべてに絡む卓越したパスセンスを披露して、あらためてその才能の高さを示し、香川や堂安とのレベルの違いを証明したと言える。

前半4分、橋本からのタテパスを受けると、体をターンさせながら鹿島の名ボランチであるレオシルバアタックを封じ、すかさず右サイドの室屋へ絶妙のスルーパス。その波状攻撃からFC東京は永井のヘッドで先制点をもぎ取った。

さらに前半16分と29分には、自陣ゴール前から絶妙なループパスでディエゴオリベイラの2ゴールを演出する。久保自身は「2点目は狙い通りで永井さんがうまくトラップしてくれて、そこからの流れで連係は良かったですね。3点目はアバウトでした。すべてディエゴがやっているので、どうこうはないですね」と話すにとどめた。

確かに2点目は味方のクリアを拾うと前を向き、前線で待つ永井にピンポイントのパスを出し、永井の独走からディエゴオリベイラのゴールに結びついた。久保にとって狙い通りのプレーだったのだろう。

しかし凄いのは「アバウト」に出した3点目につながるパスだ。鹿島のパスミスを自陣ゴール前で受けると、胸トラップからそのまま左足アウトサイドで前線に送る。鹿島CBのクリアミスもありディエゴオリベイラは独走して3点目を決めたが、アバウトでも敵と味方の位置関係を把握してパスを出したセンスは、教えようとしても教えられるものではない。

普通ならトラップして前を向いてからパスを出すか、ドリブルするのが常道だろう。しかし、それでは鹿島に守備陣形を整える時間を与えてしまう。2タッチプレーが鹿島の若いCB2人をパニックに陥れたことは想像に難くない。

これまでにも東京Vの森本を始め、ストライカーとして若い年代から才能を発揮した選手はいた。香川や柿谷、堂安らだ。しかし久保は、ドリブル突破だけでなく類い希なパスセンスも鹿島戦で披露してみせた。

すでに海外の複数のクラブから、18歳になる6月を前に照会が来ているという。まだ発展途上の選手だけに、どこまでその才能を伸ばすのか。その成長過程をJリーグで見たい気持ちと、海外のビッグクラブで活躍する姿を見たいという気持ちで揺れ動いているのは私だけではないだろう。

U-20日本代表での活躍はもちろんのこと、6月のキリンカップでの招集も楽しみな久保の成長である。


【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグ日本代表をはじめ、W杯やユーロコパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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