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 23年ぶりのチャンピオンズリーグ制覇を狙うユヴェントスだが、準々決勝のアヤックス戦を前に負傷者が続出している。

 すでにフアン・クアドラードやドウグラス・コスタ、アンドレア・バルザーリといった選手が負傷離脱していたなか、ポルトガル代表に復帰したクリスティアーノ・ロナウド太ももを痛め、代表明けのエンポリ戦では試合前のウォーミングアップ中にパウロ・ディバラが負傷。直近のリーグ戦ではマルティン・カセレスもケガを負ってしまった。

 最も懸念されるのはやはり、C・ロナウドの状態だ。アトレティコ・マドリードとのラウンド16では、ファーストレグを0-2で落として迎えたセカンドレグでハットトリックの大活躍。見事にチームを準々決勝へ導いた。彼がいなければユーヴェは今ごろ、シーズンの目標を失っていたことだろう。

 だが、アヤックスとのファーストレグではC・ロナウドを起用しないことを勧めたい。理由は二つあり、まずはケガを再発させないこと。復帰を急いでセカンドレグやその先の試合を欠場することは絶対に避けたい。そしてもう一つは、“覚醒”を期待せずにはいられない選手の存在だ。

 その筆頭は19歳のFWモイーズ・キーン。2000年以降に生まれた選手としてセリエA初出場・初得点やCLデビューなどすでに記録を打ち立ててきたキーンだが、出場時間は終盤の数分間など限定的なものだった。

 状況が変わったのは3月8日セリエA第27節、ウディネーゼ戦。今シーズンリーグ戦初スタメンに抜擢され、2ゴール1アシストの活躍を披露した。好調そのままにイタリア代表へ合流すると、ユーロ予選フィンランド戦で代表初ゴールマーク。続くリヒテンシュタイン戦でもゴールを挙げた。

 この活躍を見過ごすわけにはいかないマッシミリアーノ・アッレグリ監督にとって、C・ロナウドやディバラの離脱は怪我の功名だったのかもしれない。中断明けの29節エンポリ戦では69分と早い段階でキーンを投入。すると19歳の神童はわずか3分後に決勝ゴールを挙げて期待に応えた。さらに、30節カリアリ戦ではマリオ・マンジュキッチが発熱の影響で招集外となり、キーンは初のフル出場を果たす。そしてこの試合でもゴールを記録してみせた。

 こうして改めて最近のパフォーマンスや記録を振り返ると、すでに覚醒したと言っても過言ではないのかもしれない。だが、やはり世界最高峰の舞台で輝いてこそ“本物”だろう。アヤックス戦でそのチャンスが与えられることを期待したい。

 そしてもう一人。フェデリコ・ベルナルデスキも今、殻を破る寸前まできているように見える。A・マドリードとのセカンドレグではC・ロナウドの活躍ばかりが取り上げられたが、先制ゴールアシストと3点目のPKを獲得したのはベルナルデスキだった。その場面だけでなく、彼はこの試合で今シーズン最高のパフォーマンスを披露していた。

 これがきっかけとなったのか、アッズーリの10番を背負って臨んだユーロ予選・フィンランド戦ではフル出場で勝利に貢献すると、直近のリーグ戦2試合でも負傷者続出に苦しむチームをけん引している。開幕戦で1ゴール1アシストを記録する最高のスタートを切ったものの、調子のムラも影響して完全にチームの中心となるまでには至っていなかったが、ここへきて存在感は高まるばかりだ。

 もちろん、アヤックスC・ロナウドを欠いた陣容で簡単に勝てるほど甘い相手ではない。セルヒオ・ラモスが“あえて”セカンドレグを欠場したレアル・マドリードは痛い目にあっている。だが、ビッグイヤーを掲げるためにはアヤックス戦を含めてあと5試合を乗り越えなければならず、エースに頼り切ったチームではそれを成し遂げることは不可能だろう。

 悲願達成のためにはもう一段、高いレベルに到達する必要がある。キーンとベルナルデスキの覚醒が、そのカギを握っているのではないだろうか。

文=本間慎吾

活躍に期待がかかるキーン(左)とベルナルデスキ(右) [写真]=Getty Images


(出典 news.nicovideo.jp)