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 28歳といえば一般的にサッカー選手として最も脂が乗る時期である。このタイミングでのモデルチェンジをいったいが想像できただろう。

 大津サッカー人生のほとんどをアタッカーとして歩んできた。柏レイソルでも、ロンドン五輪代表でもそうだった。横浜F・マリノスに加入した今季も、「前線ならどこでもプレーできる」との宣言どおり、センターフォワードウイング、あるいはトップ下で起用されてきた。時にインサイドハーフプレーすることはあっても、どちらかというと高い位置取りからスタートする役割が多かった。

 転機が訪れたのは第25節の古巣・戦だった。負傷によって山中が27分に交代を余儀なくされると、中盤の喜田拓也が左サイドバックへスライドし、急きょ出場した大津インサイドハーフの位置に入った。大津ボールキープする相手を追って、追って、とにかく追いかけた。ボールホルダーにプレッシャーをかけ、パスでいなされても再びプレッシャーをかける。二度追い、三度追いを繰り返してハードワーカーとしての高い資質をのぞかせた。

 続くルヴァンカップ準々決勝のガンバ大阪戦ではホーム&アウェイともに先発出場して勝利に大きく貢献。日本代表に追加招集された天野純のを埋めるだけにとどまらず、中盤のエンジン役としてチームに活をもたらした。第1戦では自らゴールも決めたが、「スタートポジションを変えて、まず守備から試合に入っている。中盤のところでボールを奪えればチームとして前へ出て行ける。今日ゴールは自分にとってオマケ」と然と言ってのけた。

 この変貌ぶりにはプレースタイルポジショニングだけでなく、メンタル面の変化がある。9月29日に行われたベガルタ仙台戦前日のコメントがそれを徴している。「自分の感覚としてはボランチ。これまではこの位置でプレーする時に7対3くらいで攻撃に重を置いていたけど、今は4対6くらいで守備を強く意識している。自分にとって新しいスタイルだけどやっていて楽しい」

 一般的にインサイドハーフアンジェ・ポステコグル監督シャドーと呼ぶこのポジションを、大津本人はボランチと捉えている。5-2で大勝した仙台でも大津戦前の言葉どおりのプレーを体現した。自分たちがボールキープする時間が長かったとしても、100パーセントの保持は不可能。考えていたのはボールを失った間の初動だ。

「相手はカウンターを狙っていて、自分たちがボールを失ったところを攻撃の起点にしていた。だから攻守の切り替えのところで相手の攻撃の起点をつぶすことを考えてプレーした」

 チームとしてボールを保持している場面でも、常にリスクネジメントを念頭に置く。だからこそ相手ボールになった間にプレッシングの急先鋒になれた。これにはアンカーを務める扇原も、「くんは運動量があるので自分としても助かる」と賛辞を惜しまない。

 もともと持っている身体を最大限に生かすためには? 売りとしているダイナミックさをチームに還元するためには? 一般的に攻撃の選手がつけるはずの背番号9は、中盤の底に新たな居場所を見つけつつある。

文=藤井

横浜FMの大津は新たなポジション、新たな役割で存在感を示している [写真]=J.LEAGUE


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